こんにちは戸田です。
本日はECB(欧州中央銀行)の金融政策について簡単にまとめました。
早速みていきましょう。
目次
そもそもECBとは
ECBは2021年10月26日現在、EU加盟27ヶ国のうち、通貨ユーロを使用する19カ国の中央銀行としての役割を果たしています。EU全体をカバーしているわけではなく、通貨ユーロを使用する19カ国の中央銀行である点は特に重要です。EU27カ国、ユーロ19カ国です。
ECBのスローガンは「We keep prices stable and your money safe」となっています。したがって「物価の安定」と、「金融システムの安定」が主なミッション(使命)と言って問題ないでしょう。
より詳しくみていくとECBが掲げるミッションは以下5点に集約されます
- 物価のコントロール:年率2%の物価上昇(インフレ)率を掲げています。以前は2%未満でした。
- 金融システムの安定:日本でいうところの金融庁的な役割を果たしています。
- 銀行券の発行と開発:いわゆる通貨や紙幣の管理をしています。
- 金融インフラの円滑化:決済システム(ペイメント)の円滑化などにも携わっています。
- 金融市場の安定:市場が大きく崩れないようにコントロールしています。
「雇用」にコミットしていないことが印象的でした。ユーロ加盟国の失業率はバラバラ(ギリシャは常に高い失業率)ですし、そこは敢えて含めなかったのだと思います。
以上がECBの概要になります。
現行のECB金融政策(2021年9月9日)まとめ
続いて現行のECB金融政策をみていきましょう。こちらは日本語の情報として「外務省欧州連合経済室」がまとめたものをベースに、ECBウェブサイトを参考に加筆修正しました。内容はもちろん確認しておりますが、含まれる多くの情報は外務省欧州連合経済室が作成のものであり、参考文献として文末に記載しております。
種類が豊富なため、少し複雑ですが、分類を整理しましたので他の資料よりも分かりやすくなっていると思います。
3段階の政策金利
- 預金ファシリティ金利(▲0.50%):金融機関が、手元資金をオーバーナイトでECBに預け入れる際の金利。
- 主要リファイナンス・オペ金利(0.00%):ユーロシステム(ECB及びユーロ圏内の中央銀行)が定期的に行う公開市場操作(オペ)において金融機関が入札可能な下限金利となるもので、ECBの主要政策金利。
- 限界貸付ファシリティ金利(0.25%):金融機関が、急な資金需要が生じた際に、オーバーナイト資金をECBから借り入れる際の金利。
4種類の量的緩和
- パンデミック緊急購入プログラム(PEPP): 債券購入総額1兆8500億ユーロ。購入期間は少なくとも2022年3月末まで。満期を迎えた債券の再投資は少なくとも2023年末まで行う。
- 資産購入プログラム(APP):月200億ユーロのペースでの資産購入。政策金利の緩和効果を強める上で必要な限り継続し、利上げ開始直前まで継続することを見込む。
- 貸出条件付長期資金供給オペ(TLTROⅢ):民間金融機関が国債等の担保を差し出し、ECBが資金を供給。有利な供給条件が適用される期間は2022年6月まで。
- 貸出条件を定めないパンデミック緊急長期流動性供給オペ(PELTROs):追加的なリファイナンス・オペ(金利▲0.25%)。2021年に4回の追加オペを実施。
その他のアナウンス
- PEPPを通じた国債買入縮小を発表。金融環境の現状と物価見通しの双方を評価し、本年4-6月期・7-9月期よりも適度に遅いペースで購入し、緩和的な金融環境は維持できると判断。ラガルド総裁は今般の買入れ縮小はテーパリングではなく、昨年12月・今年3月に行ったPEPPの再調整であることを強調。
- 政策金利に関するフォーワードガイダンスの変更。インフレ率の見通しがその予測期間の終了前までに2%に達し、残りの予測期間で2%を維持すると見込まれるまで、さらに、基調インフレの動向が、中期的に物価上昇率が2%に安定するよう十分に進展していると判断されるまで、政策金利は現行水準又はより低い水準を維持していく。
次回ECB(2021年10月28日)の注目点は?
おそらく現状維持の可能性が高いです。
インフレ圧力は2021年9月HICP(消費者物価指数)+3.4%と弱くないですが、例えば直近に公表されたドイツ10月ifo景況感指数も芳しくなかったですし、金融緩和を積極的に縮小する局面にはないと考えます。したがって市場へのインパクトが大きい政策金利に手を加えることはまずないでしょう。
あるとすれば量的緩和の一部縮小です。
下表はブルームバーグが集計したエコノミストによる量的緩和の縮小ペースシナリオです。最新の経済予測が準備できる12月のECB会合でPEPPを縮小するのではないかと予測しています。
ただし、そもそもPEPPの開始目的がパンデミックからの早期脱却であることを考えると、景況感がいまいち戻らない中では早期の緩和縮小には動きづらいのではないかと思います。
今後のユーロの動きは
現在の水準:1ユーロ=1.1621ドル
欧州の景気はそこまで良くないですし、米国と比較すると物価上昇圧力も低く、ゆえに米国より緩和の縮小や利上げが早いことが想定されませんので、ユーロが勢いよく上昇していく可能性は低いと思います。どちらかと言えば、下押し圧力が強いように思いますが、引き続き経済指標を丁寧に追っていく局面と考えます。
本日は以上となります。
ユーロはなかなか馴染みがなく、ゆえに曖昧な部分も多かったので、私自身こうしてまとめることでクリアになったことも多かったです。頻繁にユーロの取引も行っていますので、きっと調べた内容が役に立ってくれることでしょう。
最後までご覧頂きありがとうございました。
参考文献
外務省欧州連合経済室:欧州中央銀行(ECB)による金融政策の現状 https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000470833.pdf
Bloomberg:ECBはQE柔軟性拡大へ、PEPP終了前に通常プログラム強化か https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-10-24/R1D1U4T1UM1101
ECB:Website https://www.ecb.europa.eu/home/html/index.en.html