本日はなぜ FX で負けてしまうのか?ということについて解説をさせていただきます。

簡単に自己紹介をさせて頂きますと私(戸田裕大)は元 SMBC の為替ディーラーで10年間ほど為替に関する仕事をしています。2019年からは独立して為替相場に関する執筆や、FX取引、法人のお客様の為替に関するご相談を生業としてやらせて頂いています。よろしくお願いします。

 

なぜFXで負けてしまうのか?

それでは早速、本題に入っていきたいと思います。なぜFXで負けてしまうのでしょうか?答えはとてもシンプルで、多くの場合は「相場の方向を間違えているから」です。

具体例を用いてご説明をさせて頂きます。仮に米ドルと日本円の為替レートを1ドル110円と仮定し、将来は115円に向かうと考えドルを買った場合、実際に相場が115円に到達すれば5円の儲けが発生するわけです。ところが実際にドルを買うと反対の105円に相場が到達してしまい、結果、5円負けてしまうわけです。とてもシンプルですが、相場の方向を間違えて負けてしまうということが世界中で起こっています。

ですから我々は相場の向かう方向を精度を高く予測できれば勝てる可能性は高いですよね?そこで本日は相場予測の精度を改善するための二つの考え方「インプット」「アウトプット」について、それからFXで負けないための重要な考え方「リスク管理」について順を追って解説をさせていただきます。

 

インプット

相場変動要因のインプット

どういうことかと言うと、相場変動を予測するための情報が必要ですよね?という話です。それを情報のインプットと呼んでいます。情報のインプットは皆さんもできているはずです。例えば、何かしらの新聞やニュースを見ると情報は入ってくるので、情報そのものは入ってきているわけです。しかし実は本当に必要な情報が入ってきていないのではないか?ということを問いかけさせて頂きます。そもそも必要な情報とは何か、言い換えると、相場変動の要因は何か?と言うことを突き詰めていく必要があります。

相場変動の要因はたくさんあるので、必要な情報もやはり複数あるわけです。例えば「需給」と呼ばれる変動要因は、ドル買いの取引が多く発生しやすい日を調査したり、またドル売りの取引が発生しやすい日を調査することで傾向を掴みます。シンプルですけれども重要な情報です。それから「金融緩和」と呼ばれるように、例えば日銀が大規模な金融緩和を行い、日本円が市中に溢れかえったので、日本円の1円あたりの価値が下がって、円安になるという、これが「金融緩和」、より広義の意味では「金融政策」という変動要因になります。他にも挙げればたくさんありますが、ここでは様々な相場の変動要因があることについてご理解いただければ結構です。

なかなか相場の向かう方向を当てられない場合、これら必要な情報が取得出来ていない可能性があります。後ほどお伝えしますけれども必要な情報を取得してそれを元に分析を進めていきますから、必要な情報が取得出来ていないと、それを元に分析してしまうと、結果が正しくないものになってしまいます。本記事では「相場変動を予測する上で必要な情報とは?」という内容は割愛させて頂き、今後、別の記事でお伝えさせて頂く所存です。

正確な情報の取得

例えばみなさんの周りで、噂話など不確かな情報は多くないでしょうか?私は最近 Twitter を楽しく使わせて頂いているのですが、よくタイムラインを眺めていると、「どこどこが何々を買収するらしい」とか「大口の売りが出たらしい」「中国が金融緩和に踏み切ったらしい」などさまざまな情報が錯綜していることを確認できます。真偽不明の情報が錯綜している世の中において、皆さんは本当に正確な情報を取得出来ていますか?ということを今一度確認して頂きたいです。もちろん私も100%正しい情報が取得出来ているわけではないです。しかし、我々はその精度の強弱と言いますか、極力、正確な情報にアクセスしていく必要があります。噂に踊らされないためにも、また状況認識を正確に行うためにも、正確な情報は必要です。ノイズは無視というくらいの強い気持ちも必要です。

まとめになります。インプットは必要な、そして正確な情報がきちんと取得出来ていますか?ということです。「そう言われると必要で正確な情報が取れているかどうか不安だ・・・」「もしかしたらできてないかもしれない・・・」という場合には、ここに問題がある可能性が高いと思いますので、しっかりと見直していく必要があります。なお情報が正しいかどうかの判断の仕方も、今後、別の記事でお伝えさせて頂く予定です。

 

アウトプット

二つ目にアウトプットについて解説していきたいと思います。アウトプットとは意思決定のことです。インプットで得た必要で、且つ正確な情報を元に分析をすすめ、ドルは上がりそうだ、または下がりそうだと結論を導き出し、意思決定を下す、そのための道具をアウトプットと呼んでいます。

テクニカルとファンダメンタルは二つで一つ

アウトプットには二つの代表的な手法があることをご存知でしょうか?ご存知の方もいらっしゃるし、そうでない方もいらっしゃると思いますのでご説明します。分析手法には「テクニカル分析」「ファンダメンタル分析」と呼ばれる大きく2つの手法が存在します。テクニカル分析というのは過去の値動きをもとに将来の値動きを予想する試みです。例えば移動平均線など過去の平均レートを取得し、そこから相場の傾向を読みとく分析手法があります。またファンダメンタル分析とは国家の財政や稼ぐ力などを理解し、将来の相場変動を予想する試みです。例えば日本とアメリカの金利差「日米金利差」が3%あるので、アメリカのドルは今後買われていくのではないか?という金利差のアプローチや、中国は国として儲かっているけれども、トルコは国として儲かっていないので、人民元は上がりそうで、トルコリラは下がりそうだ、など、その国の稼ぐ力や体力をもとに相場予測を進める手法が用いられています。

「僕はテクニカル派なんだよね」とか「私はファンダメンタルだけで十分」と意見表明をされている方をよく見かけるのですが、私はファンダメンタルとテクニカルは両方用いた方がよいと思っています。例えばファンダメンタルで見てドルが強そうだ、ドル買いがワークしそうだと考え、さらにテクニカルにおいてもドル買いを示唆していると、安心してエントリーを行うことが出来ます。ですから二つが重なることで自信を持ってドルを買えるわけです。なかにはテクニカルだけとか、ファンダメンタルだけで勝てると断言されている方もいるのですが、私は、まがいなりにも十何年為替トレードをやって、勝てるディーラー、負けるディーラーをたくさん見てきて、ファンダメンタルとテクニカルの両方を用いた方がより勝ちやすいのではないかという現時点での結論に達しています。

分析の意味を正しく理解しよう

二つ目は分析の意味を正しく理解しようということです。この発想は、後輩に一度、為替の分析をどういう風に考えているか聞いてみた時に、「一目均衡表」というテクニカル分析手法があってその利用方法を見せてくれたことに起因しています。一目均衡表は非常によく使われる分析手法ですが、その後輩は1時間を一つのデータとして分析を進めていて、そこで私は少し違和感を感じたわけです。実は一目均衡表は、そもそも1日を一つのデータとして分析を進める手法なんです。それから一目均衡表は、元々は株の分析のために開発されたものですので、それを為替相場分析に適用している点も気になりました。間違いや勘違いは誰にでもあることですので、まったくもって仕方ないことですけれども、おそらくはこういうことが金融機関のディーラーや個人投資家の間で多く発生しているのではないかとも思いました。

一目均衡表やフィボナッチ(戻りの目安の判断)など様々な分析手法が存在しますが、数多くの分析手法を知るよりも、むしろ一つの分析の意味を深く正しく理解して使えることが重要です。それはテクニカルもファンダメンタルも同様で、やはり曖昧な理解で分析してしまうと、結果に違和感を抱きづらいですし、間違えた道具を使用して分析した結果、間違えた結果が出てくることは容易に考えられそうです。意味を理解することは、とても重要です。最初は周りの方のまねをするのも大事ですが、最後はやはり自分の腹に落とし込む、完全に理解しないといけないです。

まとめますと、アウトプットには「テクニカル分析」と「ファンダメンタル分析」の二種類が存在し、この二つをセットで使うべきということです。それから分析の意味をしっかりと腹に落としてから使うようにしましょう。たくさんの分析をする必要はないと思っています。それこそ移動平均やトレンドラインでも十分ワークしますので、一つのことを突き詰めて理解することを心がけていただくと良いと思います。

 

リスク管理

最後にリスク管理について解説します。リスク管理は相場の上がる下がるを当てるためのものではなく、 FX で負けないために、勝ち残るためにリスク管理はとても重要、という視点です。

身の丈に合ったトレードをしよう

例えば私がドルを100万ドル、1ドル=110円で買い、相場は110円から115円に向かうと考えていると仮定します。ところが相場は109円に反落。この場合、私は既に1円負けていますので、100万ドル×1円、つまり100万円負けています。この段階で、もう無理、もう耐えられないとなってポジションを決済してしまうと、仮にその後115円に上昇したとしても、私は既にポジションを決済しているわけですから、最終的な相場の予想は合っていたにも関わらず、負けてしまったことになります。これは相場予測は合っていたのに、自分の体力以上にポジションを取りすぎたため、負けてしまったということです。

金融市場全般に言えることですが、どれだけ相場にトレンドが出ていようが一直線にその到達地点に向かって進んでいくわけではありません。時に下がりながら、もみ合いながら、目指すべき道、上記の例の場合は、目標の115円に向かうわけです。ですからちょっとしたアンワインド(予測方向と反対に動くこと)には耐えられるようにしておかないといけないわけです。それはつまり「リスク許容度」と言い換えるが可能で、つまり自分の体力と自分のポジションを比較して「本当にこれだけのポジションを持って大丈夫か?」「保有しすぎじゃないか?」という点を意識する必要があります。ポジションが少なすぎる分には大丈夫です。大きくは稼げないと思いますが、痛みも限定的です。そのうちに一気に稼ごうとして、大きなポジションを持つと、相場予測とは別に、負けてしまう可能性があり、危険だと言うことは認識しておいてください。つまり我々は身の丈に合ったトレードを心掛けるべきなのです。

ルールの作成と運用が極めて重要

二つ目がルールの作成と運用です。皆さんは FX を雰囲気で取引していませんか?実はさんざん偉そうなことを述べてきた私も、昔は雰囲気で取引をしていました。ですが今は、自分に課したルールに則って取引をしています。

私は人間の精神状況は極めて不安定だと思っています。辛いことがあればお酒を飲みたくなりますし、とても良いことがあってなぜか強気になってしまうとか、意外と精神状況は安定していないものです。そして気分に任せてポジションを保有すると、本当にろくなことはありません。インプットして、アウトプットして、さぁ取引しようという時に、自分の気持ちに任せて取引したら、丁寧に分析を進めた意味は全てなくなります。またその取引の優劣を振り返ることもできません。本当に全てを無に帰してしまうことになります。繰り返しますが、気分に任せたトレードは、本当に無駄ですし、勝ちたければやってはいけないと思います。

これはとても重要なポイントなので是非覚えて頂きたいのですが、どんなにインプットが上手い人、どんなにアウトプットが上手い人でもFXで勝てない可能性があり、それはルールの作成と運用が出来ていないからです。淡々と自分の決めたことをできるかどうかが、とても重要です。きっとこれはトレードの世界だけではなく普遍的な真理と思います。特に、皆さんの中でも、解説されなくても「わかってるわ」って思う、聡明な読者の方こそ、この点には十分にお気をつけください。

私はエクセルに自分のトレーディング・ルールを記載しています。またワードにも「十戒」みたいなイメージで書き記していて、それを毎日、読み上げています。取引する前にも必ず見ますし、取引をクローズする時にも必ず確認します。エントリーして、クローズして、一つの取引が完結するのですが、この両方のタイミングで必ずルールを見るようにしています。ですから私がルール通りに取引しない事は、近年はないです。ルールは見直していくべきものですから、ルールそのものは定期的に見直してください。ただし、必ずそのルールにそって運用してください。そうでないと、断言します、勝てません。

 

まとめ

さて、最後にまとめたいと思います。なぜ FX で負けてしまうのか?理由は簡単で、相場の方向を間違えているからです。

要因は三つあります。一つがインプットです。必要な情報を取得する必要がありますが、それが出来ていない可能性があります。また、皆さんが取得している情報は正確な情報ではない可能性もあります。正しくない情報をインプットすると、正しいアウトプットを行うことは出来ません。

二つ目がアウトプットです。分析手法には主にテクニカルとファンダメンタルという二つの分析手法があります。そして、これらを組み合わせて使うことを強くお勧めします。片方だけではワークしない可能性があります。二つ目がそれらの分析をたくさん使う必要はないのですが、使う分析手法の意味を正しく理解して相場予測を行う必要があります。

三つ目が相場の方向とは関係ないですが、FXにおいて、リスク管理は極めて重要です。言葉を選ばずに言えば「身の丈に合ったトレード」を心掛けてください。それからルールの作成と運用も必ず必要になりますので、是非、お手元に用意して、トレードに臨んでください。

本日はインプット、アウトプット、リスク管理という3点についてお話をさせて頂きましたが、それぞれ詳細は割愛させて頂きましたが、今後、それぞれの詳細についても記事として配信させていただこうと考えていますので、もしよろしければブックマーク登録をして頂けると嬉しいです。

戸田裕大と運営チームは、2021年4月から、「為替から世界を学ぶ」をコンセプトに活動を始めています。為替から世界を学ぶというコンセプトは、もともとテニスにしか興味がなく、さらにそこで挫折をして、6年間ほど無気力状態に陥り、海外旅行すら行きたくないくらいに世界に全く興味のなかった私が、縁があって銀行でトレーディングの仕事に従事させて頂き、それがきっかけでトレードにはまり、それを突き詰めていくことで、だんだんと世界について興味を持ち始め、見識が広がり、人生が豊かになり、今ではメディア等への寄稿や本を出版させていただくなど、ある程度、世の中に詳しくなることが出来たのですが、そのきっかけは、振り返れば為替トレーディングであり、為替から世界を学んだ実体験に基づいています

現在、個人投資家の方は FXというツールを通じて本当に世界の通貨を取引することが出来るわけですけれども、必要な情報は、世界の政治経済情報なわけです。ですからFXを通じてどんどん世界を知る、見方が広がっていくということが体験できると思います。また私たちはそれを手助けしていきたいと考えています。個人投資家の方が為替を勉強する機会は、おそらく少ないです。それは SNSやYouTube を見ていてそう思います。もしよろしければ、私たちと一緒にFXから世界を学んでいただければ、すごく嬉しいです。

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一緒に相場を見て、勉強して、為替から世界を学んでいきましょう!