こんにちは、戸田です。三井住友銀行で10年間、外国為替ディーラーやセールスなどを担当したのち、2019年から独立しているものです。

本日は「為替から世界を学ぶ」という活動のコンセプトについてご説明します。

このコンセプトには為替を学んだことで実際に私の人生が変わった経験と、今後、為替から世界を学んで頂く方に素晴らしい体験をして頂きたいという想いを込めています。これだけではなかなか伝わらないと思いますので、すこし詳しく私の歩んできた道についてお話をさせて頂きます。

 

大いに挫折した学生時代~社会人前半

私の学生時代の中心はテニスでした。8歳からテニスを始め、プロテニスプレイヤーを目指して活動し、遅咲きでしたが、高校3年生の時に、全国大会で好成績を収めました。

機会を頂き、大学1年生の時にアメリカはフロリダに短期テニス留学をします。そこで現在までプロテニスプレイヤーとして活躍する錦織圭選手と出会いました。そして一緒にジュニアの試合を転戦する中で、彼のあまりの技術の高さに驚き、大きな挫折感に包まれ、道半ばでプロテニスプレイヤーの道を諦めてしまいます。今にして思うと、他人と比較して自分の夢を諦めてしまったことはなんとも勿体ないと思うのですが、その頃の私は精神的に未成熟でそれ以上チャレンジする気を失ってしまいました。

その後、日本に帰国し大学の部活でテニスを続けましたが、気持ちは萎えテニスの成績は低迷しました。それまでテニス一筋の生活を送ってきた反動もあって、練習もほどほどに友人との遊びやゲーム、麻雀などの勝負事に明け暮れる日々が続きました。本当にどうしようもない大学生だったと思います。

大学4年生のころ、多くの学生が就職活動を始めたので私もなんとなく就職活動を開始し、数えきれないほどの不合格通知を頂きました。ただ、不思議と三井住友銀行とは縁があり、リクルーターの先輩行員に支えられ、合格通知を頂きそのまま二つ返事で入行を決めます。

しかし、テニスでの挫折を引きずり入行後もエンジンがかからず、会社では怒られっぱなし、本当に使えない新人行員だったと思います。見かねた上司が、君はスポーツマンだから、やはり勝負の世界に身を置いてみてはどうだと、外国通貨の売買を一手に担当する、市場部門に異動させてくれました。これが今後の人生を変える大きなきっかけになります。

 

為替(FX)との出会いが転機に

市場部門に異動し、1年間の下積み修行を経て、少しですが自分で為替(FX)のポジションを持たせて頂くことになりました。自分なりに工夫をし、勝ちにこだわって取引を開始しましたが、厳しい勝負の世界、当たり前ですがそう簡単に勝つことは出来ません。

異動前の部署(法人営業)では、「担当先が小さいから成績を残せないのは当たり前」と自分に良い訳をしてきましたが、為替の世界で負けるのは、自分のせい以外の何物でもありません。言い訳の出来ない環境で、色々と試行錯誤を繰り返します。

最初に行ったのは意外と思われるかも知れませんが、数量的なアプローチでした。と言っても私は学生時代に勉強はほどほどにテニスに打ち込んできましたので、難しい数学の公式が理解できるわけではありません。本当に単純ですが、ドルの上がりやすい時間帯や曜日、日付などを調べて取引に役立てました。上手く行ったと感じたこともあれば、なんだか違うなと思うこともありました。この時にゴトー日(5日や10日に実需の取引が増える)や期末日の為替の特徴などを学びました。

次に、難解に思えましたが経済指標に注目しました。周りのディーラーの方が経済指標に注目していたことが一番の理由ですが、実際に米国の雇用統計が強いと米ドルが上昇する関係性について肌で感じていたので、よしやってみようという気持ちで試してみました。そこで米経済指標をみて、指標の良し悪しに応じてポジションを傾けました。しかし当然と言えば当然ですが、結果はついてきません。そこで初めて、経済指標だけで相場は動いていないということに気づきます。

市場部門(為替の部署)に異動して4年が経った2013年、アベノミクスと言う安倍政権の大規模なマクロ経済政策が始まりました。アベノミクスは三本の矢(①大胆な金融政策、②機動的な財政政策、③民間投資を喚起する成長戦略)で構成されており、そのうちの、①大胆な金融政策、すなわち黒田バズーカを通じて円安が加速し、ドル円は80円から125円に上昇しました。

この時に、金融政策が為替レートに与える影響は大きいと肌で感じることができました。またトレードが上手い人は、経済指標の確認を通じて、金融政策を読みとこうとしているのだと理解することも出来ました。

その後2014年から2年間、西日本で法人向けの為替セールスを担当します。この時、全国を出張してまわり、地域の大手企業や地域密着型の金融機関に為替相場を説明しました。お客様に相場を説明することを通じて、相手が首をかしげる、相手から質問を受けて上手く回答できないなど、いかに自分が相場のことを何にも分かっていないのかをよく理解することが出来ました。また人に伝わるように、ストーリー立てて話をしようと心掛けることで、少しずつ相場の大きなテーマをイメージ出来るようになったのもこの時からです。

2016年には、英国のEU離脱を決める国民投票が行われ賛成多数で英国のEU離脱が可決されました。ブレグジットと呼ばれたこの国民投票から離脱までの一連の流れで、英ポンドの価値は20%以上減価しました。

そもそも、ブレグジットなど起こるはずもないと思い込んでいた私は本当に無知でした。尊敬していた上司から、英国の政治を理解したければ英国とその周辺国の地理や歴史を学ばないといけないと諭され、政治が為替に影響を与えるのはもちろん、もう一段つき詰めて考えれば、地理や歴史・宗教観も間接的に為替相場に影響を与えているのだと知ることが出来ました。

 

中国で受けた刺激

丁度この頃が入行8年目、会社で中堅と呼ばれる世代で、一通り業務も理解したことから、縁があって海外赴任のお話を頂き中国は上海で人民元の調査を進めながら、人民元取引を行うことになりました。赴任先の中国では全てが目まぐるしく変わり、政治の決定方法も日本とは大きく異なることにカルチャーショックを受けました。たったの一年で都市が開発されていくあまりの勢いに、経済は目に見えて成長することもあると実感しました。また権威主義体制下の金融市場の特徴や、新興国に多く見られる資本規制の特徴についても学び、これが自分の得意分野になりました。

もともと、海外生活は嫌いでしたし、中国については特に良くない印象を持っていました。しかし、色々と情報を仕入れるには英語を使えた方が良い、それから勢いのある中国人の考え方を知るには中国語も学んだ方がよいと考え、仕事の傍ら語学の学習に取り組みました。このころにはすでに「勉強は楽しい」と思えていたので、寝る間を惜しんで勉強するのも苦しくはなく、むしろもっと世の中を知りたいと言う想いが強くなっていました。これは為替相場分析を通じて、断片的な世界の情報が少しずつ繋がっていくことを体験していたからだと思います。

その後、上海で駐在員として働きながら「CEIBS」と言うランキング上位の経営大学院に通います。そこでは24人の外国人、35人の中国人と苦楽を共にし、異文化の考えに触れ新たな人生観を形成することが出来ました。当時の私は30代前半でしたが、クラスメイトは40歳前後の方が多く、人生の先輩として相談に乗って頂きながら、自分が今後どのような人生を送りたいのか?を自問自答する機会が増えていきました。

この頃には自分の学びたい、チャレンジしたい欲求と、銀行という大きな組織の中での役割との両立が難しくなってきて、大変にお世話になった会社に不義理になるとは思いましたが、わがままを聞いて頂き、上海駐在中にそのまま三井住友銀行を辞め独立します。その後、現地の日系企業を対象に為替リスク管理に関する営業を行う傍ら、サクソバンク(中国現法)と共に個人投資家向け為替セミナーなどを行いました。初めての独立で、且つ異国の地、上海とあって分からないことだらけでしたが、たくさんの方に支えて頂き、あっという間に1年の時が過ぎます。

 

日本に戻ってきて定めた新たな進路

もっともっと上海でチャレンジしたい気持ちもあったのですが、武漢でコロナウイルスが蔓延し、身の危険を感じて日本に戻ってきまして、その後はしばらく上海に戻れない日々が続きました。その間に扶桑社から米中関係(金融)に関する出版の話を頂き、またSPEEDAから現在の中国経済をテーマに講演の機会を頂く中で、自分の道について改めて考え直し始めます。

私は中国の専門家なのだろうか?私が世の中の役に立てることは「為替」ではないだろうか?そんなことを考える日々が続き、進路を見直し始めることにしました。

新たな道を模索し始める中で、昨年に扶桑社から出版した書籍「米中金融戦争」を読んだCEIBS(上海の経営大学院)の後輩2人が、ぜひ何か戸田さんのお手伝いをしたいと名乗り出てくれました。そこで彼らと一緒に、まずは私のちらかった考えを、約1年間を掛けて整理しました。そしてようやく今、私は原点に立ち返ることができました。

私は、為替から世界を学んでいる、その旅路にいます

学生時代の挫折で本当にダメになってしまいそうだった私が、為替を通じて世界を学び、もう一度前向きに挑戦し人生そのものが豊かになった体験を、今度は私が世の中のために広めたいと考えました。ですから私たちはこの活動を「為替から世界を学ぶ」として前面に押し出して活動しています。

 

新規サービスの開始

活動の軸が定まれば、あとは実行するのみ。2021年4月にはYouTubeチャンネルの開設と会員制サービス「為替トレーディング部(現在は外為専門家「戸田裕大」のオンラインサロンへと移行)」を新規公開しました。YouTubeは無料、オンラインサロンは有料です。

会員の皆様と一緒によりよい学びの場にしていきたいと考えています。

私たちが世に伝えたいことは、為替を通じて世界を学び、人生が豊かになる体験です。

私は正直に個人投資家としての歴は浅いです。2018年までは会社との特殊契約で(私が会社として安いドルのレートを提示し、私が個人としてその安いドルのレートを購入することが技術的に可能なため)FX取引を行うことが出来ませんでした。ですので、実際に自分の資金を用いてFXを始めたのは2019年からです。4年と少しくらいでしょうか。

2019年から始めた自己資金による売買ですが、4年間を通じて好成績を残すことが出来ました。現在のところ、売買金額や損益額を大っぴらに公開することは、為替から世界を学ぶの価値観とは合わないと考えており、控えています。ただし、資金の伸び率についてはどこかで区切ってお伝えしても良いのではないかと考えています。

 

トレーダーの本質(ご留意点)

ここで少し、トレーダーと言う職業の本質の話をさせてください。

本当はこれを読んでくださっている読者の方、一緒に為替から世界を学んで頂ける全員が為替で勝てれば良いのですが、それは正直に難しいと思っています。なぜなら為替トレードはペーパーテストではなく、参加者同士の対戦、向き不向きがあるからです

世界中の通貨を取引出来るということは、世界中の投資家が対戦相手であるとも言えます。スケールが大きくてより広範な知識を得ることが出来ますが、その分、たくさんの強者が潜んでいる世界であることに十分留意が必要です。

テクニカルやファンダメンタルズの分析を覚えることはもちろん重要ですが、それらは他の参加者も覚え使用しますので、差はすぐに消滅してしまう世の中です。ですから勝てる手法というのは、すぐに陳腐化してしまう可能性があり、また将来に何が起こるか見通せないことも多々あります。常に臨機応変な戦略が求められる、これが真理だと思います。

また相場と向き合うには性格的な向き不向きもあります。世の中にはいろいろな性格の人がいて、勉強が得意な人、説明が得意な人、とにかく勝負が好きな人、仲間と協力するのが得意な人、応援するのが得意な人など本当にさまざまです。私見ですが、トレードはテニスと似ています。コツコツと学び積み上げる力、自分と向き合う力が強く試されます。それが苦手な人もいれば、得意な人もいるはずですから、みんなが勝てます!と言うことを私の口からは申し上げることは出来ません。

ただし、一つだけ、みなさんが私と一緒に為替から世界を学んで頂くことで、必ず手に入れることが出来るものがあります。それは過去の自分よりも、世界の政治経済や相場分析に詳しくなり、結果として人生が豊かになることです。つまり為替取引とそれに必要な学習を継続して行うことで、より自分事として世界の知識を吸収し、成長速度を加速させるのです。

 

成功の本質(なぜ学びが必要か)

私はまだ何かで成功を成し遂げたわけではありません。そのため成功者の声を借りて、どのように努力を積み重ねれば成功を収めることが出来るかを学んでいます。

かの有名な投資家、ウォーレンバフェット氏は一日のほとんどを読んで考えることに使っていると答えています。投資で成功するためには、さまざまな方法がありますが、氏はその投資対象に価値があるかどうかを判断するために、日々時間を費やしているそうです。

氏は株式投資がメインですから主に企業分析をしているのでしょう。私たちは為替を中心に据えているので、分析の対象は国家を中心に行うことになります。みなさんはそれを行っていますか?なんとなく衝動にまかせて取引をしていませんか?もしこの質問に対して、胸が痛むようでしたら、思い直すよい機会と思います。

それから幕末の動乱において精神的な支柱であったとされる吉田松陰先生が祀られている松陰神社には、こんな言葉が綴られています。

「知は行の本たり、行は知の実たり」

知識は行動・実践のもとであり、行動・実践は知識が実った果実である、と言う意味だそうです。正しい知識がなければその行動や実践に不安が付きまといますし、またそこから実る果実(成果)も少なくなるということだと思います。

私はTwitter等のSNSを通じて、個人投資家がFXから得られる学びの少なさを感じています。買った・負けたと言う表面を切り取ったツイートに、匿名の責任なき情報発信ツイート、「そんな情報ばかりを見ていても、おおよそ実力を向上させることは出来ない」ということはみなさん自身が心から感じていることではないでしょうか?

為替を通じてさまざまな国を知ることは大変に豊かなことです。料理や洋服、地理や歴史や宗教、大事にする価値観、好きな異性のタイプまで、本当に色々な国や人が世の中には存在します。またテクニカル分析を通じては、数量的なアプローチを理解し、世の中の事象を概念的に理解することも出来るようになるはずです。

私は、仕事以外の目標では、死ぬまでにすべての国に足を踏み入れたいと本気で考えています。また仕事の目標では、将来は日本の政策アドバイザーかファンド運営者になり、投資立国の日本に貢献したいと考えています。日本の部活と言う極めて狭い世界で生きてきた私と海外との接点を作ってくれた「為替」に今日も感謝しつつ、世界を学び、将来への投資に力を入れています。

以上が「為替から世界を学ぶ」に込めた私の想いです。みなさんと一緒に為替から世界を学べることを心より楽しみにしています。

戸田裕大