過去記事「なぜFXで負けるのか?3つの視点から解説します!」では、為替相場予測が当たれば、勝てる確率が高まるということをお伝えしました。また、そのためには、必要な情報、そして正確な情報を取得すべきと言うお話をしました。
そこで今回は、FX取引に役立つ情報収集術といたしまして、情報収集のヒントをお伝えしたいと思います。内容は「必要な情報」、それから「正確な情報」の2つに関係のある内容になります。
結論として情報の質が高いコンテンツと、低いコンテンツとに切り分けていくので、私が質が低いと判断した情報を取得している方からすると耳ざわりの悪い内容になると思います。自分自身も、万人に受ける内容をお伝えするのが良いのか、それとも厳しいことを含めてお伝えした方が良いのか、正直にかなり迷いました。ですが世に蔓延する、聞こえの良いだけの無意味なコンテンツ、詐欺まがいの誘い文句に一石を投じるため、覚悟を決めて厳しい内容も書いていこうと決意した次第です。
お付き合いを頂ければ幸いです。
目次
質の高い情報を得よう
私は、質の高い情報を得ることはとても重要なことだと考えています。
イメージとして、「情報は毎日のご飯と一緒」と捉えています。バランスの良い健康な食事を続ければ、心身ともに健康になりますが、偏った食事ばかりを続ければ、病気を引き起こしかねません。
昔の私はとても無知で、偏った情報しか持ち合わせていませんでした。もちろん今でも偏った知識ですし、無知でもあるのですが、度合いの問題として、ここではご理解ください。
例えば昔の私は、中国人はなんだか声が大きい、きっと街は汚い、人も優しくないと思っていました。ですが現地に足を運んでみると、たしかに中国人の声は大きかったのですが、街は思っていたよりもずっと綺麗でしたし、暖かい人が多いことを知りました。
みなさんもこう言った経験はございませんか?きっと人間は大なり小なり、物事を正しく理解できていないのです。そしてその原因は何であろうと考えてみると、おそらくTVなどのメディアによる偏った情報が大きな原因の一つであると思っています。
もちろん友人や家族など参加しているコミュニティの影響も大きいでしょう。ただ急に変えられるものと変えられないものがありますから、ここでは変えられるもの、すなわちメディア等の情報媒体との接点について掘り下げていきたいと思います。
世界的なベストセラーとなった「21世紀の人間のための21の思考」を記したユヴァル・ノア・ハラリ氏は、著書で「私たちは虚構と現実を見分けるのが苦手である」と注意を促しています。具体的には国家や宗教のストーリーを引き合いに出し、そのストーリーが虚構の上に成り立っているが、私たちはしばしばそれを信じて熱狂してしまうことを鋭く指摘しています。
また瞑想を取り入れている方には分かりやすいと思うのですが、私たち人間は自分の意志とは別に、食欲、性欲、情動などが瞬間的に芽生えて、そして勝手に消えていきます。つまり人間は、一見すると自分で考えて結論を導き出しているようにみえて、実は刷り込みによって意思を形づくられているところが大きいのです。そしてその刷り込みによって、私たちは道を誤ったり、大きなチャンスを得たりしています。
ですから日々私たちが触れる情報は大きなリスクでもあり、そして大きなチャンスでもあるということをまず真っ先にお伝えしておきます。なるべく正確で質の高い情報に触れていくことがトレードの世界においても、現実世界においても非常に重要であると言うことがここでお伝えしたい一番のポイントです。
質の高い情報とはどんな情報か
さてここでみなさんに質問です。質の高い情報とはどのような情報でしょうか?きちんと分類して、取捨選択が出来ているでしょうか?一度、目を瞑って考えてみてください。
私が考える質の高い情報について以下に記載していきます。
データやファクトそのもの
一つ目は、データやファクトそのものです。これは、官公庁等から発表されるデータ、各種アンケート調査、そして自分自身が足を運んで見た情報を指します。加工されていない情報を頭に入れていくことは正しい未来予測を行うための基礎情報として大変貴重になります。
そもそも官公庁から発表されるデータや、各種アンケート調査も正しいかどうか、大いに怪しいという指摘もあると思います。それはその通りです。例えば中国の統計数値が加工されていると言う指摘があることは、みなさまがご存じの通りです。これについては拙著「米中金融戦争 香港情勢と通貨覇権争いの行方」でも述べていますが、やはり注意深くみていく必要があるでしょう。
また中国に限らず、他の国でも怪しい統計はあります。ですがそのようなデータしか使えない場合は使っていくことになります。その上で、例えば並べてみると明らかにデータに違和感がある場合などは差し引いて判断していきます。
最終的には現地確認と合わせて行うのが良いでしょう。どんなデータよりも、どんなアンケート調査よりも、それを自分の目で見て回るということは大切なことだと思います。私は「百聞は一見に如かず」を座右の銘に掲げていますが、そこには長年にわたって市場調査を行ってきた自身の経験や想いが詰まっています。ああでもない、こうでもないと憶測で議論をすすめるのではなく、実地調査を行う、これが非常に大切です。
データやファクトに基づく深い分析
二つ目はデータやファクトに基づいた深い分析です。ざっくりしたイメージですが、私が思う質の高い分析は以下の順位付けになります。
論文>書籍>新聞(日経)>記事>SNSs
左が質の高い情報、右が質の低い情報です。あくまで一般論ですが、限りなく事実に近いとも思っています。
論文は過去の調査結果や、現在の置かれている状況をもとに丁寧に作り上げていく文書になりますし、専門家の査読もつきますので、これが一番、高品質の可能性が高いです。ただし、例えばFX関係の論文を私がみても、正直に難しい内容のものも多いです。また数学のバックグラウンドがないと、そもそも何を書いてあるのか分からないものも多いのも事実。ですからいきなりここにチャレンジをする必要はありません。あくまで超上級者向けです。
書籍はじっくり時間をかけて書くものになりますし、著書の立場としても世にカバーをつけて送り出すものですから、あまり雑なことは出来ません。これは私自身が本を書いた経験にも基づきますが、読者の方が読みやすいように工夫もしますし、また出版社のダブルチェックも入りますので、新聞や記事よりも質の高い情報が多いと思います。私が普段、情報源としているのも大体は書籍になります。
新聞は色々な種類がありますが、ここでは日本経済新聞を想定します。世界の情勢を、断片だけ知るには非常に良いツールだと思います。政治に関しては深い考察もありますが、経済に関しては即時性を重視しているため、正直にそこまで役に立つ分析はありません。あくまで何が起こったのか、事実関係を知るうえでのツールとしています。
記事に関しては、執筆者に依るのですが、全体でみれば質の低いものが多いです。主観的な情報も多く、またデータや根拠に乏しい記事が多いため、基本的に私が記事を情報源として、投資を行うことはありません。「この人が書いていることなら聞いてみたい」「この人の記載は比較的にデータやファクトに基づいている」など取捨選別していくことが重要になります。
SNSsについては、残念ながら質は最も低いです。Twitterなどはそもそも140文字しか書けませんし、さらに匿名の情報も多いので、これを鵜呑みにしていては本当に危険です。あくまで交流のツール、発想の気付きを得るためのツールとして捉えると良いと思います。
即時性の高い情報
三つ目が即時性の高い情報です。特に為替市場などの金融市場では、即時性の高い情報は投資に役立つ可能性もあるため、高い価値があります。そういう意味では短い文章で即時性の高い情報をやり取りするTwitterが金融市場と親和性が高いのもうなずけるところです。
そのような中でどのような情報に触れていくべきかを記したのが以下になります。
官公庁などが公表するデータ・要人発言>専用端末>SNSs>リアルタイム検索
最も手堅いのは官公庁の公表データや要人発言を直接的に取得することです。ただし注意が必要ですが、直接確認してください。メディアを通じての情報は恣意性が含まれています。特に海外の要人発言についてはひどいものです。取得方法については後ほど詳しく解説しますがRSSと言う手法を用いることで、こういった情報をある程度もれなく拾ってくることが出来ます。
専用端末とはロイターやブルームバーグなどのサービスを有料で利用することです。こちらはほぼ漏れなく情報を拾ってくれますが、月額の費用も20万円前後となっているため、個人投資家の選択肢には含まれないでしょう。
一般の個人投資家の方におススメなのがTwitterのリストや、リアルタイム検索です。インターネット上に無数に流れる情報を、人物や、キーワードを選んで情報収集していきます。その際に匿名の情報が多く含まれることになりますが、それらは情報の質が低い可能性が高いので、あくまで何がいま話題になっているのかに注目し、出来れば事実を確認するようにしましょう。
以上3つの情報が投資をする上で質の高い情報となると考えています。
情報の取捨選択のコツ
では次に実際の情報収集における取捨選択のコツをお伝えします。情報の取捨選択は難しいと思いますが、以下にこだわることで、ある程度、質の確保を担保出来ると思います。
- 出典の記載や、データの集計方法を明示している情報を利用しよう:反対にこれらを明示していない情報に触れてもあまり価値はないです。なぜならば、そう言った情報は発信者の単なる思いこみに過ぎないからです。
- 匿名の情報はなるべく遠ざけよう:匿名の情報には発信者の責任が伴っていません。そのため全般に事実を軽視した発言が多く、適当な情報が多いのが特徴です。私も当初は匿名でツイートをしようか考えたこともあります。銀行員と言う立場では発言しにくかったからです。ですので匿名の方の立場を理解することは出来ます。ただし、情報の信頼性としては低下することになりますので、正直にあまり参考には出来ないです。
- 実名の情報を見よう:2と反対ですが、発信者の責任が重く伴っていますので、匿名情報と比べれば信頼に足るものが多いです。一方で、実名の情報が必ず正しいと言うわけでもないので、その点は注意しましょう。あくまで匿名と比べれば、社会的なリスクにさらされている分、真面目に発言している可能性が高いということです。
- 情報は一方の意見だけでなく、なるべく反対の意見も聞こう:当事者の片方の意見しか聞かないのは、事実認識に偏りが生まれるものです。裁判でも原告と被告の意見を両方聞いて、結論をだします。これを実践に置き換えると、米中対立において、米国の意見を聞いたら、なるべく中国の意見にも耳を傾けるということです。一つの物事を多面的に捉えていくことで、なるべく事実に近いところまで迫っていきます。
- どこの誰がどの立場で発言したのか意識しよう:例えばFRB議長が米国の金融政策について発言したことは気にすべきですが、それとはまったく関係のない組織に所属する有名人が発した米金融政策に関する内容など気にする必要は全くありません。なぜならば、金融政策を決定するのはFRBのメンバーだからです。それからFRB議長の発言だからといって、会見での発言に注目しても意外とヒントは少ないものです。なぜならば、そこでは保守的にしか回答出来ないからです。この辺りは情報の読み手の経験も試されますが、真意を読む力を磨いて引く必要があります。
- RSSやリストを活用し、自分だけの情報端末を作ろう:情報を無防備にたくさん浴びてしまうのは本当に危険なことです。上記を通じて必要な情報と不必要な情報とを整理し、必要な情報だけをまとめて、RSSやツイッターのリストを活用し、自分だけの情報端末を作りましょう。
- 動画よりも、音声よりも、本を読もことに慣れよう:動画も音声も情報取得の手段には変わりありません。ですが文字以外の情報と言うのは臨場感はあるものの、内容は不正確なことが多いです。なぜかというと、例えば私がYouTubeや為替セミナー等で発する言葉は、ぱっと自分の頭に思い浮かんだことを話していることも多く、まとまりのない情報になってしまうことも多々あるからです。その点、文章は何度も見返してまとめていますので、きちんと論理展開が出来ていたり、データの裏付けがある内容が多いです。歩いている時に、音声情報を聞くのはとても良いと思いますが、机の前にいる時は、文章から情報をとるなど使い分けが出来ればさらに効率的に情報を収集できると考えています。
以上が情報の取捨選択のコツになります。
貴重な情報には十分なお金を掛けよう
みなさんは情報に対してお金を掛けることに抵抗はありますか?私ごとですが、全くないです。書籍やメルマガは速攻でポチり、その後に読むか読まないか、メルマガの購読を継続しようか、継続をキャンセルしようか決定しています。それだけ情報が価値のあるものだと判断しているからです。
まず、無料の意味について考えてみましょう。作り手がコンテンツを無料で市場に提供する意味はなんでしょうか?
やはり何か得があるから、無料で情報を発信するのです。例えば、駆け出しの作家であれば、知名度の向上を目的として無料でコンテンツを提供するかもしれませんし、ブロガーであればアフィリエイトなどから広告を得るために無料でコンテンツを提供するかも知れません。
そして読者であるみなさんは、これを情報として受け取ります。ここで気をつけて頂きたいのですが、情報を受け取るとこと自体は無料ですが、みなさんの時間、そして大事な脳へのインプットが行われることになります。繰り返しになりますが、私たちは刷り込みによって意思を形づくられているところが大きいので、無料だからと言って何でもインプットしてしまうのはとても危ない行為になります。言葉を選ばずに言えば、コンテンツ作成者の意図通りに刷り込ませる機会を、みなさんが無料で提供しているのです。
有料のコンテンツが必ずしも有益ではない可能性もありますが、無料の情報よりも有益なものが多いと思います。例えば日本経済新聞などは購読に値すると思います。世界の情勢を断片だけでも日本語で知れる機会に対して、月々4,000円前後で購読出来てしまいます。これだけの情報を取得する手間を考えれば、私は素直にお金を支払います。
英語での情報収集が可能な方は、英エコノミスト誌もおススメします。こちらは週刊誌になりますが、月々4,000円を切る水準で提供されており、コンテンツのクオリティは日本経済新聞よりももう一段深い分析が多いです。
それから各種メルマガも読んでみても面白いと思います。面白いなと思った作者の考えに触れることが出来ます。月々1,000円前後のものが多いですから、お酒一杯飲むよりは、役に立つメルマガ一本購読した方が良いと思います。もちろん、質が低ければ、即座に購読を停止しましょう。「質の低い情報は、無料でもお断り」この考えが極めて重要だと考えています。
無作為に広告が出てくるサイトを見るのはやめよう
最後にとても重要な話をしたいと思います。無作為に広告が出てくるサイトにアクセスすることを辞めることを強くお勧めします。
例えば、日経新聞が新たなサービスを告知した、メルマガで作者の著書の案内がある、インフルエンサーが読んだ書籍を紹介した、これらはみなさんが興味のあることの延長線上のサービス案内ですから、そこまで気にしなくて良いと思います。良いものかも知れないと感じたら、ぜひ次のサービスにもトライしてみてください。
ただし、無作為に出る広告と言うのは、みなさんの意識を、本来みなくても良いコンテンツへと逸らせ、洗脳していきます。ようは、こういったサイトの運営者は、そもそもみなさんに質の高い情報を提供しようという意思はないと思った方がよいでしょう。
テレビの流しっぱなしもやめた方が良いです。コンテンツの質を否定するわけではないのですが、そもそもみなさんの興味のない情報を仕入れる必要はないですし、興味のないコマーシャルに意識を奪われる必要もないからです。
インターネットを用いる際は、アドブロックなどの広告非表示機能を使用することをおススメします。いつ何時、画面の前に出てくるか分からない広告ですが、ある程度は防いでくれます。
YouTubeなど、勝手に広告が表示されてしまうサイトは、さっさと有料会員に切り替えましょう。月々1,000円程度でコマーシャルを見る時間を削減でき、私たちの大事な脳へのインプットを制限出来るのですから、安いものです。
Investing.comなど、チャート分析についても広告非表示の有料版を使いましょう。広告を見ていて得なことは一切ありません。
それからTwitterの「今どうしている?」も消してしまいましょう。個人投資家が、芸能人の痴情を知る必要はないからです。例えば私はクロムのブラウザを使用していますが、Stylebotと言う拡張機能を使うことで簡単に非表示にすることができます。
アイフォーンのコンテンツ制限もおススメです。中毒性のあるサイトを登録をすることで、絶対に見れないような設定にも出来ます。もしかしたら、このような記事を書いたことで、みなさんからみた私は、気が触れているほどに情報収集を徹底しているように見えると思うかも知れませんが、私も一介のフリーランス(個人投資家?)に過ぎません。やはり正直にYahooニュースのゴシップネタが気になってしまうこともあります。しかし、そう言った誘惑から身を守るために、コンテンツ制限を加えて、そもそもそのサイトを見れなくすることで対応しています。ここまで徹底するかどうかは人生観にも依ると思うので、強制する訳でも何でもないです。ただこう言ったやり方もあると言うことは覚えておいて損はないかと思います。
とにかく一つずつ、横着せずに広告を消していくことが重要です。そのための対価としてお金が必要ならば、さっさと払ってしまいましょう。
まとめ
長くなりましたが、最後にまとめを行いたいと思います。
まず、最も重要なことですが、私たちは意外と「虚構と現実を見分けるのが苦手」で、実は刷り込みによって意思を形づくられているところが大きいので、普段から触れる情報には十分に気を付ける必要があります。なるべく正確で質の高い情報に触れていくことがトレードの世界においても、現実世界においても非常に重要であると言うことがここでお伝えしたい一番のポイントです。
それからデータやファクトに基づいた情報に触れる機会を増やし、即時性の高い情報の収集にはRSSやリストを活用しようと言うことをお伝えしました。情報の取捨選択は投資のパフォーマンスに大きな影響を与えると思います。もし出来ていなければ、いまからでも少しずつ環境を整えていきましょう。
情報の取捨選択のコツとしては、なるべく匿名の情報を遠ざけるなど、7つの項目に分けてお伝えしました。どれも私たちが実践可能な内容ばかりです。ぜひ一度お試しください。
そして貴重な情報には十分にお金を掛けようというお話をしました。質の高い情報は私たちに富をもたらします。反対に質の低い情報は私たちの最大のリスクになることについて、今一度理解し、情報にお金を掛けることから抵抗をなくしましょう。
最後に、無作為に広告が表示されるサイトとは距離を取りましょう。そう言ったサイトは、みなさんの投資に役立つコンテンツを提供しようと言う気はないと思います。
以上が、私が特にお伝えしたかった点です。正直、癇にさわる内容を多く含む内容だと自覚しております。ですが、本当のことをお伝えするのはいつでも苦しみが伴うものです。乗り越える準備が出来た人は、ぜひこの記事を活かして、次の情報収集を工夫されてみてください。
引き続き為替から世界を学んでいきましょう。
戸田裕大