人民元基準値
2019年8月8日、中国人民銀行がドル/人民元相場の基準値を1ドル7.0039 人民元 に設定、11年ぶりに 1ドル7人民元を超える基準値を設定しました。8月5日時点で、実勢レート(市場取引価格)は1USD7人民元を突破していましたが、いよいよ中国人民銀行が設定する基準値も1USD7人民元を超えたことになります。
そこで本日は『基準値と実勢レートの違い』『基準値の算出方法』『基準値が7.0を突破した意味』について纏めてまいります。また余すことなくデータの見方を解説していきますので、中国財務関係者の方に特にオススメの内容となります。

【人民元】基準値と実勢レートの違い

基準値とは中国人民銀行が平日朝9:15頃に発表する『中心レート』のことです。中国外汇交易中心と言う中国で唯一認められた外国為替取引市場のデータから参照することが出来ます。

※中国外汇交易中心より抜粋
この基準値ですが、実際に取引することは出来ません。あくまで参考レートで実際には企業の会計や税務申告の際に使用する為替レートです。また基準値は通称『中心レート』とも呼ばれます。1日の相場変動はこの『中心レート』から上下2%までと定められており、これが中国の為替制度が『管理変動相場制』と呼ばれる所以です。具体的には本日の相場変動は下限6.8932〜上限7.1439に限定されることとなり、仮にこれを超える相場変動が起こった場合には、為替介入が行われることとなります。
次に『実勢レート』を見ていきます。こちらも中国外汇交易中心と言う中国で唯一認められた外国為替取引市場のデータから参照することが出来ます。

※中国外汇交易中心より抜粋
このレートが2019年8月8日14:44頃の板情報(買いたい人/売りたい人の注文板)で、実際の取引レートに限りなく近い数値となります。基準値が7.0039でしたが、14:44頃の実勢レートではドルを買いたい人のレートが7.0450となっていますので、基準値と実勢レートの差が0.0411存在する事がわかります。朝の9:15から約5時間半が経過していますから、その間に相場が動いてしまいました。ですが、例えばドルを当日支払う場合に、一般的に基準値が『会計レート』となりますから、基準値と実勢レートの差 (0.0411) × 米ドル支払い金額 = 為替差損となりPL(損益計算書)に計上される事となります。ですから基準値になるべく近いレートで取引をしたいと言う方は、なるべく朝早い時間(可能なら前営業日)に銀行にご連絡した方が良いと言う事です。
なお、人民元取引は全てCFETS(China Foreign Exchange Trading System)と言うシステムを用いて行われ、そのデータが中国外汇交易中心に掲載されます。ですから人民元データを調査・分析したいと言う場合には中国外汇交易中心を見れば全て事足りる訳です。ところが日本ですとこれは全く異なる管理体制で、日本の場合は例えばEBS(Electronic Broking Services)や各銀行・証券独自のプラットフォームなどが乱立しているため全てのデータを集める事が困難です。
続いて基準値の算出方法について見ていきます。後述しますが、基準値の算出方法がわかると、相場が見通しやすくなります。

人民元基準値の算出方法

まず以下の表をご覧下さい。

※中国外汇交易中心より抜粋

これは人民元の日中の取引レート推移なのですが、横軸が9:30-23:30までしか用意されていない事がわかります。ですから人民元の取引はこの画面の通り9:30-23:30まで、従って閉場後の23:30-翌朝9:00頃までの他通貨の変動を参考に、人民元の相対的価値を算出、翌朝9:15頃の基準値を決める、これが基準値の計算プロセスです
では世界中の通貨の内、どの通貨を計算に考慮するのか?答えは以下の表の通りです。通称『CFETS人民元指数』や『通貨バスケット』などと呼ばれていて、下表に計算の比重が記載されています。特に中国との貿易額が大きい国の計算比重が高くなっている事が見てとれます。

※中国外汇交易中心より抜粋
ですから閉場後の23:30-翌朝9:00頃までのバスケット通貨の変動を考慮すると、9:15頃に発表される基準値が推測出来ます。そしてその推測値と中国人民銀行の公表値が異なる場合、そこに中国人民銀行の意図が表れていると言うことになります。従いまして、当ブログでこれまでお伝えしております通り、当局が発する情報をきちんと調査する(中央銀行とのコミュニケーションを図る)ことが必ず経営・財務にプラスになります。
この表を基に作成した『基準値予測Excel』ファイルに興味があると言う方はコンタクトフォームより直接ご連絡をお願いいたします。お問い合わせが多かった場合には、どのような形でお客様に還元出来るか考えていきます。
さて次に基準値が7.0を突破した意味について考えていきます。

人民元基準値が7.0を突破した意味

一つは中国人民銀行が明確に7.0を超えることを許容したと言う事です。なぜなら基準値と言うのは通常は計算によって算出されますが、意図的に7.0を超えないように数値を修正することが可能だからです。意図的に数値を修正せずに基準値を公表する、逆説的に考えれば、今のところはあくまで市場(計算ロジック)に委ねると言う、当局からのメッセージあると言う事が理解できます。
次に、基準値を7.0より上で決めると言うことは、仮に相場が本日の上限レートである7.1439まで変動したとしても、範疇であり想定の範囲内であると、中国人民銀行がこのように考えている可能性があると言うことです。つまりさらなる現安は想定内の可能性があります。急に0.10動くことは珍しいのですが、一方でオフショア市場(中国国外の人民元市場)では1ドル7.1000人民元前後で取引が成立しておりますので、十分にその可能性に留意しておくことが重要です。
最後に先日記載しました中国人民銀行のコメントを再掲載します。
「重要なことは、人民元相場が7.0を破ったということ、7.0は年齢ではないが、一度超えたらすぐには戻ってこない、そしてダムでもないが、一旦壊れてしまうとその水はすぐに千里先へと流れてしまう。」

【人民元】基準値まとめ

それでは以下に本日のポイントを纏めます。

  • 基準値は『中心レート』であり『会計レート』
  • 実勢レートは『取引レート』
  • 人民元の相場変動は基準値から上下2%
  • 基準値は予測可能
  • 基準値の予測値と実際の公表値が違う場合には、それが当局の意図である可能性が高い

いかがだったでしょうか。中国の為替政策を調査するのは骨が折れるのですが、調べた後は、ものすごくクリアです。弊社では特にこの分野は自信を持ってお客様へ情報のご提供、ご相談への対応を行なっておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。今後ともブログをフォローして頂ければ幸いです。

戸田裕大

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参考文献・WebPage
中国外汇交易中心 http://www.chinamoney.com.cn/chinese/