人民元/日本円
管理変動相場導入以後の人民元/円チャート(月足)

ここもと人民元/円相場が下落しています。今週に入って1人民元14円71銭まで下落しました。
この為替変動を受けて、法人では円建て仕入れコストが増加、また中国駐在員の給与と資産が目減り、これらを受けて筆者のもとに今後の人民元/円相場はどうなるのか?と言う問い合わせが急増しております。
そこで本日は人民元/円相場予想の第一弾をお伝えします。取り巻く状況は毎日変化しますので、あくまで本日時点の弊社の見通しである旨、ご了承くださいませ。
結論から申しますと、短期的には人民元/円はテクニカルチャートをブレイクしており、さらに下落しやすいですが、総合的に考えれば奈落の底(例えば12円台)まではまず落ちないと考えています。この辺りから人民元を買い下がって行けるのであれば、中長期的には良いところで人民元を買えたと振り返れるシナリオを予想しています。

過去の人民元/円相場(振り返り)

まずはチャート(ページトップ)をご覧ください。2010年から2013年まで1人民元12円の時代があった一方で、2015年には1人民元20円の時代があったことがわかります。ですから2013年から2015年の2年間に人民元の価値は約1.67倍上昇しています。そして直近は下落し、1人民元14円台へと突入しています。つまり人民元/円は明らかに変動の大きな通貨ペアであると言えます。そもそもなぜこんなに変動が大きいのか見て行きましょう?

人民元/円はなぜこんなに大きく変動するのか?

人民元と円はそれぞれ異なる特徴を持っています。高金利の人民元・低金利の円、新興国で高成長の中国・成熟国で低成長の日本、つまりは投資先である中国・調達先である日本、このように相反する特徴を持っていることをまず把握しましょう。
このような通貨ペアにおいては、リスクセンチメント、すなわち「投資家心理」が大きく影響します。どう言うことかと言うと、世界が平和で、相互に協力的で、また金融緩和的で、経済成長が大きく見込めそうであればお金は日本から中国(円売り人民元買い)へと流れます。なぜならその方が儲けが大きいからです。一方で、世界各国が険悪な雰囲気で、金融引き締め的で、経済成長があまり見込めなさそうであれば、お金は中国から日本(人民元売り円買い)へと流れます。なぜなら中国投資(人民元買い)はリスクが大きいと思うからです。
冷静になって考えてみると分かりやすいのですが、両極端の特徴を持っている通貨であるからこそ、相場が大きく動くと言うことはきちんと理解しておいた方が良いでしょう。

人民元/円の分析

代表的な為替相場分析が二つ存在します。一つがファンダメンタルズ分析、一つがテクニカル分析です。それぞれ順にみていきます。

人民元/円のファンダメンタルズ分析

人民元円ファンダメンタルズ分析
人民元/円ファンダメンタルズ分析、中国マイナス要因ばかりではない

分析について補足します。ファンダメンタルズ分析と一言で表現しても、切り口は一つではありません。たまに紙面等で金利差にのみフォーカスした分析がありますが、金利差はあくまでも一要因に過ぎません。弊社では上記八項目に分けて分析しています。特に国際政治については分析が難しく、一方で影響も大きいことから、ファンダメンタルズ分析の実力差は、すなわち国際政治分析の実力差と言っても差し障りないでしょう。弊社は米中貿易協議そのものは終結の可能性があると思いますが、米中の覇権争いは中長期的に継続するものと予想しています。

次にファンダメンタルズの要因を「現状」と「将来」に分けて考えます。「現状」は市場に既にある程度織り込まれていると考えます。ですから重要なことは「将来」どのようなことが起こるかを予想し、その影響を考慮することです。例えば下から二番目の為替政策ですが、弊社では日本の為替介入の可能性を将来予測に入れています。
中国サイドは米中貿易協議のマイナス影響が非常に大きいものの、債券・証券市場の対外開放による資金流入効果や中国の国内景気刺激策は人民元にとってポジティブであり、また日本サイドに目を移せば、円高局面では円売りの為替介入の可能性があることを考えると、一概に人民元のマイナス要因ばかりではないことが分かります。

人民元/円のテクニカル分析

人民元円移動平均
人民元/円に移動平均(1年・3年・5年)を加えたチャート(月足)

テクニカル分析の一つ目が移動平均線との比較です。直近の人民元/円14.70台は明らかに移動平均(1年16.07、3年:16.42、5年:17.16)を下回っていることが分かります。直近は2018年初にチャート(ロウソク足)が移動平均(薄い紫のライン)とクロスして下に伸びていますので、ここでトレンド転換して下落局面に入ったと言う見方が出来ます。時期的にも米中貿易協議が開始した時期と重なりますので、後付けの説明としても、すっと腹に落ちるのではないかと思います。

人民元円ボリンジャーバンド
人民元円ボリンジャーバンド、バンドを外れるとすぐにバンド内に戻る

二つ目がボリンジャーバンドを用いた分析です。これは移動平均にボラティリティ(価格変動率)を組み合わせて、あらかじめ相場の行き過ぎを予測する分析手法です。計測全期間において、チャート(ロウソク)がバンド(紫色の影)を離れた後、チャートはすぐにバンド内に戻っていることが分かります。ですからそう長くは現状の水準が続かないと言う見方も出来ます。

人民元/円の今後の予想

弊社は、短期的に(数ヶ月は)米中貿易協議の影響を受けて人民元/円が下押しする可能性は高いと考えていますが、中長期的には人民元高方向を予想します。
なぜならば、中国が今後さらに成長していき、金融セクターの対外開放を進め、人民元の国際化政策を進めていく上で、それに反比例して人民元安が続いていくことを想像出来ないからです。さらに、先進国がMMT(Modern Monetary Theory)を含む追加の量的緩和策を検討している一方で、中国は比較的健全な金融政策を維持していくであろう事もこの判断を後押ししています。
従って、14.70台は長い目で見れば買い場(人民元を買って良かったと思える水準)になると考えており、筆者は自分の投資用口座でこの辺りから買い下がっていくつもりです。
それでは本日はここまで。弊社では今後も人民元を中心に、中国金融・経済情報を発信してまいりますので、引き続きフォローして頂ければ幸いです。

戸田裕大

<参考文献・WebPage>
各種チャート:Investing.com

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