ドル人民元ヒストリカルチャート
管理変動相場導入以後のドル人民元チャート(月足)

ここもとドル人民元が上昇(ドルが上昇、人民元が下落)しています。今週に入って1ドル7.17人民元に近い水準をつけました。
これら相場変動をうけて、みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケットエコノミストは「1ドル8.0人民元の可能性」を指摘し、日経新聞は独自の試算で「需給に委ねれば1ドル10.0人民元をつけていた可能性」について指摘しています。
そこで本日は弊社のドル人民元相場予想の第一弾をお伝えします。取り巻く状況は毎日変化しますので、あくまで本日時点の見通しである旨、ご了承くださいませ。
結論から申しますと、短期的には水が低きに流れるのと同様、元安の流れが継続しやすいです。普遍の事象として、一方向に推移する時に、その流れに歯向かおうとしても、往往にして大きな流れに飲み込まれるものです。ただしクライマックスは近いと考えています。これは後述するファンダメンタルズ要因、テクニカル分析要因を根拠としていますが、目安としては1ドル7.20人民元で一旦揉み合いを予想します。米中貿易協議睨みながらにはなりますが、そろそろ反転の可能性に備えるべきでしょう。

ドル人民元の過去相場推移

まずはページトップのチャートをご覧ください。人民元に管理変動相場制を導入した2005年7月からのドル人民元の動きをまとめています。

  1. 2005年-2007年の元高サイドへの通貨価値見直し
  2. 2008年-2010年のリーマンショックの影響を吸収するための固定相場
  3. 2011年-2013年の再度の元高サイドへの通貨価値見直し(ここで1ドル6人民元をつける)
  4. 2014年-2016年の中国初の資本流出(1ドル7.0手前での攻防)
  5. 2017年の人民元国際化を背景とした急激な元高(1ドル6.2元)
  6. 2018年-2019年の米中貿易協議による元安(1ドル7.0を突破)

簡単に上記を振り返っていきます。ドル円とドル人民元に共通しているのが、「昔は固定相場で今は変動相場」、そして両国とも「輸出大国」ということです。経常収支大幅黒字国である日本と中国が固定相場→変動相場へと移行した結果、市場で価値の見直しが行われました。なぜかと言うと、固定相場で輸出が大儲けということは、つまり自国通貨が不当に安かったからです。これは例えばドル円で言えば、360円→80円(価値の見直し+オーバーシュート)→100円(価値の収斂)であり、ドル人民元で言うと1ドル8.2元→1ドル6.0元(価値の見直し+オーバーシュート)→1ドル6.5元(価値の収斂)です。そして価値の見直しの(自国通貨高が進む)課程で国際収支(特に経常収支)の偏りが収斂し、国際収支がゼロ均衡に落ち着き、為替相場は安定していきます。これが経常収支黒字国の相場変動制移行時の典型的推移パターンです。
ところが、中国の場合は日本と異なる特徴があり、この局面ではまだ相場が安定しませんでした。中国では人民元の国内外資金移動に制限がある(完全に自由な通貨ではない)ので、法人も個人も資金を外に出したいニーズが存在していて、そこに大きく火をつけてしまったのが、上の番号の4番です。人民元高からの反転局面が中国初の大型の資本流出の呼び水になってしまいました。この大きな資本流出(元安)の流れを止めるために、中国人民銀行は多くの外貨準備を消費し、ドル売り人民元買い介入を行うとともに、「半循環的調節要因」「為替予約規制」など様々な為替管理手法を充実させていきます。そしてその反動で再度元高方向に相場が動いたのが5番の時期です。
5番の時期を経て相場はいよいよ安定する、そう思ったところで始まったのが、6番の米中貿易協議でした。これがここまでの大きなドル人民元の流れです。

現状のドル人民元(米国/中国)分析

米中(ドル人民元)ファンダメンタルズ比較

米中ファンダメ分析
米中ファンダメ分析 米国の優位性は見出せない

トランプ大統領が「アメリカファースト」を掲げ、各国と貿易協議を行なっていることは米ドルに取ってポジティブな材料ですが、結果として米国の信任を落とし、米ドルを介在しない取引を助長している点が中長期的に見るとネガティブです。また中国の経済成長が著しいため、相対的に米国の立ち位置が下がってしまう点も米ドルにネガティブでしょう。弊社は短期の需給を除けば米国のファンダメンタルズは中国に劣ると判断します。

米中(ドル人民元)テクニカル分析

ドル人民元ボリンジャーバンド(月足)
ドル人民元ボリンジャーバンド(月足) 範囲の上限

まずは先日もお伝えしたボリンジャーバンドから見ていきます。チャート(ロウソク)が20ヶ月平均(真ん中の赤いライン)を大きく上抜け、ボリンジャーバンドの上限に位置しています。反転を狙うには良いタイミングと言えそうです。

ドル人民元RSI(月足)
ドル人民元RSI(月足) 買われ過ぎのサインが出ている

次にRSI(Relative Strength Index)をご案内します。数字50(14ヶ月平均)を中心として、70より上は買われ過ぎ、30より下は売られ過ぎと、相場の行き過ぎを図るテクニカル指標です。ファンダメ分析の項目で述べましたが、筆者は人民元相場の価値見直し期間が終了したのが2014年と考えております。価値見直し期間とは言ってしまえば一方向に進むだけの相場です。従って2014年以降が上下する常態の相場と考えています。そこで2014年以降に限定してRSI分析を当てはめて考えると、チャートがRSIのバンド(30-70の赤紫のバンド)にきちんと収まっていることがわかります。
ボリンジャーもRSIも買われ過ぎ、売られ過ぎを図る指標ですが、二つの指標ともにバンドの上限に近いので、そろそろ反転の兆しが見えてもおかしくありません。

ドル人民元の今後の予想

短期的には水が低きに流れるのと同様、元安の流れが継続しやすいでしょう。ただしクライマックスは近いと考えていて、目安は1ドル7.20人民元で、この辺りでの揉み合いを予想します。ファンダメンタルズ、テクニカル共に人民元にはポジティブなサインが出ています。米中貿易協議睨みながらにはなりますが、そろそろ反転の可能性に備えるべきでしょう。
それでは本日はここまで。弊社では今後も人民元を中心に、中国金融・経済情報を発信してまいりますので、引き続きフォローして頂ければ幸いです。

<参考文献・WebPage>
各種チャート:Investing.com

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