新型肺炎の影響

本日は新型肺炎が与える、中国経済、そして世界金融市場への影響について「人民元」を介してご説明させて頂こうと思う。結論から申し上げると、1. 世界の金融市場及び人民元市場は、新型肺炎が中国経済に与える影響を過度に織り込み過ぎていた。 2. そして現在は、反対に、楽観的になり過ぎている可能性がある。以上二点について詳しく解説を行なっていく。

1月16日の米中貿易協議の第一段階の合意を受けて、1月20日に16円10銭台の高値をつけた人民元は、春節を目前に新型肺炎の影響が表面化したことで反転、下落した。春節期間中は、故郷に帰省する人民が公共機関を使用することで、感染者数がさらに拡大し、経済への悪影響を嫌気した市場参加者により人民元はオフショアで売り込まれ、2月3日、15円45銭まで下落した。

不謹慎と言われるかも知れないが、あえて申し上げると、ここは絶好の買い場となった。忘れてはいけないのが相場の大局観で、大きな相場のテーマは2018年から始まった米中貿易協議において、両国が和解方向に進んでいると言うこと。ある意味では極めてポジティブな市場環境が今も続いていると言える。

さらに、当時の事実に基づくと、年間200営業日、今回の新型肺炎で実質休業となるのは5日間とされ、休業となる日数は 5/200営業日、つまり全体の2.5%の影響に過ぎない。さらに言えばこの間に医療品や食料品の売上は伸びること、社員は在宅で勤務することから影響は軽微であるとも言える。

米中貿易協議の進展、限定的な休業日数、さらに中国をはじめ各国が景気刺激策を打ち出したことも好感され、15円80銭まで戻したというのが、足元までの人民元相場だ。

ただし現在は楽観視出来ない情報が筆者のもとに多数聞こえてきているため、中国ロングポジション(株や人民元)を一旦軽くして警戒モードで相場と対峙している。

南部と北部を繋ぐ要所、湖北省の武漢で、省や市を跨ぐ移動が大幅に制限されたことで、物流を中心に、経済活動は停滞の兆しを見せ始めている。さらに新型肺炎は湖北省周辺の省(河南省・湖南省)でも猛威をふるいはじめ、そこでもまた移動制限が強化されている。さらに恐ろしいことに、日本をはじめ、中国国外においても感染の拡大が確認されている。

また1月頃にご入院され、武漢でお亡くなりになられた日本人の方が、中国公式統計の数値に入ってきていない。この事実から新型肺炎の確定診断が行われていない患者が多数存在していることが想定される。

さらに中国と密に連携していると想定される日本の外務省から、2月7日、中国現地でお勤めの方に向けて「積極的」一時帰国をご検討くださいとの通知が行われた。そして極めつけは12日、「至急」一時帰国をご検討くださいとの緊急通知がなされた。

どうして外務省が強く帰国を勧めるのか、今一度深く考える必要がある。我々投資家は、米国を筆頭に国家の情報収集能力を甘く見てはならない。

この先の新型肺炎の状況を見通すことは困難を極めるが、こう言った状況下で、新規の中国ビジネス(例えば日中合作)の話は出てこなくなる。

やはり状況は深刻なのだ。ここから先、慎重に新型肺炎の影響を見守る必要がある。