みなさんこんにちは。若竹コンサルティングの戸田です。
本日は「一帯一路とは?」と題しまして、一帯一路の概要について中国共産党新聞の重要論評として掲載されている内容を和訳してご紹介させて頂きます。訳中に出てまいりますが、論評の著者は日本の有名大学や研究機関などで一帯一路についてディスカッションを行った際に、日本人の一帯一路に対する認識が少なく、且つ認識に差異があったことに問題意識を感じています。壮大なテーマゆえに、さまざまな議論を巻き起こしている一帯一路ですが、我々日本人及び日系企業はバイアスの掛かったメディア情報を参考にするだけでなく、考案者の考え方を正しく理解した上で、例えばプロジェクトを支持する・しない、投資に参画する・しないと言う判断を行うことが非常に重要なことではないかと考え、本和訳を執筆するに至りました。一帯一路にご興味ご関心あられる方は、ぜひ参考にして頂ければ幸いです。それでは早速見てまいりましょう。

一帯一路とは?【中国共産党新聞、重要論評の和訳】

原文タイトル:正确认识“一带一路”
作者:陈积敏

2018年02月26日

 

序文

現在100を超える国家と国家組織が一帯一路プロジェクトに支持または参加を表明しており、国連総会や国連安保理事会などの重要会議にも一帯一路が議題の一つとして組み込まれている。しかし国際社会からみた一帯一路構想は依然として不透明で理解されていなかったり、さらには誤解されていることも見受けられる。筆者は昨年、日本のとある学会に参加した際に、日本の有名大学、研究機関とのディスカッションを通じて、日本人が一帯一路に対して認識している内容が少なく、且つ我々の認識との間に差があると感じた。従って我々は、一帯一路がどのようなプロジェクトであるか?一帯一路が世界に何をもたらすのか?など基本的な重要事項を整理することが一帯一路を継続推進するために役立つだけでなく、互いの理解や交流にも寄与するものと考えた。

一帯一路の基本的な内容

一帯一路は発案されて以来、合作の地域や領域を広げ、新しい合作の形を模索し、共栄するために、発展させ完全なものにすると言う原則に変わりない。
一帯一路は開放的な地域合作を提案しており、非排他性で、中国の閉鎖的な商業圏と言うことではない。現在、世界は開放されており、また開放により進歩し、閉鎖的な政策は遅れをとる。中国は開放政策を行うことでこそ機会を得られ、そのため主導的に機会を創造し、それを掴むことで国家の目標を実現したい。一帯一路は世界的な機会を中国の機会とし、また中国の機会を世界的な機会とする。この認識とビジョンのもとに一帯一路を開放し、他国を導き、交通を強化し、相互に協力可能なエネルギーとネットワークを設置し、経済を自由に流動させ、資源を有効的に配分し、市場の融合を深め、範囲を更に広げ、水準を高め、更に深い領域での合作・製造、包括的で均衡的で普遍的な地域経済合作を構築し、経済成長と経済均衡の問題を解決する。一帯一路とは多元的で開放的で包括的な合作の構想である。一帯一路の開放的で包括的と言う特徴は、その他の地域性の経済政策と比べて特筆すべき点である。
一帯一路は実用的な合作のためのプラットフォームで、決して中国の地政学的な道具ではない。一帯一路は和平的な合作で、開放的・包括的で相互利益のあるシルクロード精神、人類が歴史と富を共有する原則を提案する現在の重要なプロジェクトである。また関係のある国家間の多面的な交流合作の強化を通じて、十分に各国の潜在的な力と比較的な有利点を発掘・発揮し、相互に利益のある共同体として、また運命や責任を共にする共同体として活動する。このメカニズムの中で、各国は平等な参加者であり、貢献者であり、受益者である。そのため一帯一路は当初より平等性を兼ね備えており、平和的な特徴を持つ。平等は中国が堅持する国際的な規範であり、それは一帯一路の重要な基礎である。平等を基礎とした合作こそが持続的な協力と相互利益を可能にする。一帯一路の平等的で包括的な合作の特徴はプロジェクトを阻害する要因を減少させ、合作の効率を高め、国際合作が真に根を生やすことになる。同時に、一帯一路プロジェクトは平和的な国際環境と地域環境から切り離せず、平和は一帯一路の本質的な属性であり、順調に押し進めるための欠かすことのできない重要な要素として保証されている。一帯一路が大国の政治の道具として使用されるべきではないし、それは不可能であるし、昔のように地政学的な政争のために使用されることはない。
また一帯一路は共に話し合い、共に協力し、共に分かち合い、連動して発展するプロジェクトであり、決して中国を支援して頂くための計画ではない。一帯一路建設は双方、あるいは多面的な連動を基礎とし、具体的な項目を推進し、進行中の十分にコミュニケーションが行き渡った戦略的協業と市場のオペレーションを通じて形成される発展計画である。2017年5月、《“一带一路”国际合作高峰论坛圆桌峰会联合公报》と言う名の国際フォーラムの報告で、包括的な市場原則、すなわち十分に市場作用を認識し、企業を主体とし、政府が適切な保証を行い、政府の購買プロセスを開放し、透明で差別なく進める一帯一路建設の基本原則が強調された。一帯一路建設の核心的な主体とそのサポートは政府ではなく、企業であり、根本的に市場の規則に準じ、市場オペレーションモデルが各方面への利益訴求を実現する。政府はその中で政策を通じて方向を指し示し、プラットフォームとメカニズムを構築し、機能を向上させる。
一帯一路は現存の開発プロジェクトと相互補完関係にあり、代替とはならない。一帯一路と各国の関係はそれぞれ異なり、差は明確で、補完性が強い。ある国家はエネルギー資源が豊富であるが開発力が不十分、ある国家は労働力は十分であるが就業人員が不足、ある国家では市場規模は十分に残されているが産業の基礎が不十分、ある国家ではインフラ建設のニーズが強いが資金が不足している。我が国の経済規模は世界二位で、外貨準備は世界一位、優れた産業も少しずつ増加し、インフラ建設の経験は十分に有り、設備製造力は質量共に高く、価格競争力が有り、資金を備え、技術・人材・管理など総合的に優位性がある。これは中国とその他の一帯一路参加国の産業の連結と相互補完の優位性を提供し、非常に大きな需要を創出する。それゆえ、一帯一路の核心的な内容はインフラ建設を促進し、且つ相互コミュニケーションを深め協調的な発展を促進し、各国政策と発展戦略を合致させ、それらを深化させるための実務合作であり、共存共栄を実現すること。また一帯一路は明確に地域的な合作の代替ではなく、現存する合作との相互に補完的なプロジェクトである。実際に、一帯一路建設は既にユーラシア経済連合、インドネシア国際海洋開発計画、カザフスタンの「光明の道」経済発展計画、モンゴル「草原の道」計画、欧州投資計画、エジプトスエズ運河回廊開発計画などと連接・合作を実現、さらに中国連雲港のカザフスタンとの物流基地の合作など、いくつかの代表的な合作を既に形成した。新しいアジア欧州間の経済回廊の成果の一つとして、連雲港物流合作基地の初歩的な実現、「深水大港」海洋ライン、「中欧班列」物流拠点としてのシームレスな連接が挙げられる。またカザフスタンの「光明の道」計画とも高度に連結している。カザフスタンの「光明の道」党の首席であるペラシェフ氏は「光明の道」新経済政策を一帯一路計画と連結する中で、一帯一路は推進に有効で、カザフスタンの、ひいては中央アジア地区の経済発展、そして各国の経済・文化などの領域での合作の余地を開拓し新しい機会を多く創造したと示した。
一帯一路建設は人と文化の交流を促進するが、文明の衝突を引き起こさない。一帯一路は地域、異なる文化、異なる宗教信仰を跨ぐが、文明衝突を引き起こさない上に、各文明間の交流や学びをもたらす。一帯一路のインフラ建設を推進する中で、発展戦略と同時に合作生産能力が強化され、民衆の心が通じ合う。シルクロード精神を発展向上させる過程で、智のシルクロードを展開し、科学・教育・文化・衛生・民間交流など各領域での広範な合作を発展向上させ、民意を基礎とした一帯一路建設を更に堅実なものとし、社会の基礎を更に強固にする。フランスの前首相である Dominique de Villepin 氏は一帯一路建設は政治・経済・文化の架け橋や紐帯となり、人民が国境を超えて交流を行うための重要なプロジェクトと考えている。それゆえ一帯一路建設は文明の隔たりを超越した交流で、文明は相互に学ぶことで衝突を避け、文明が共存することで文明の優劣をつけることを避け、関連する国家の民族交流を強化し、相互理解を強化することで新しい架け橋となり、異なる文化と文明の対話を強化し、相互に学び交流し新しい紐帯とし、各国の相互理解・相互尊重・相互信任を推進する。

一帯一路の国際的な意義

一帯一路の合作の範囲・領域は拡大を続けている。これは各方面の参加者に合作によるたしかな利益をもたらしているだけでなく、挑戦と機会創造への世界貢献であり、知恵と力と自信を強化する。
一帯一路は全世界の統治に新しい道と方向を示す。現在の世界はチャレンジが増え、リスクは日に日に増大している。経済成長の動力は乏しく、金融危機の影響はいまだに燻っており、発展の差は日増しに広がり、予期せぬ事件が起こり、貿易保護主義傾向が台頭し、非国際化の思想が湧き出て、地域の情勢が不安定で、テロリズムが蔓延している。平和の欠如、発展の不足、地理的な不均衡など厳しい挑戦が全人類の前に待ち受けている。これらは世界の統治構造の問題であると説明可能で、早急に新たな解決策を探さねばならない。中国は一つの新興大国として、完全な世界の統治制度に貢献する知恵と力量、能力と願いと責任を有する。新たな挑戦・問題・状況に面し、中国が提案する世界の統治制度は、人類運命共同体、すなわち共存共栄を実現し、一帯一路をそれら目標への具体的な実戦の場とすることである。一帯一路は各国の平等な参加、普遍的で包括的、協力して世界経済への挑戦に立ち向かい 、新しい発展の機会を切り開き、新たな発展の動力を追求し、人類運命共同体の方向へ邁進することを強調する。これは以下の原則と理念に基づく。一帯一路プロジェクトは各国発展の現実問題と統治体制問題に焦点を合わせ、アジアインフラ投資銀行(AIIB)と新開発銀行(NDB)を設立し、シルクロード 基金(SRF)など新たな国際機構を立ち上げ、多くの形式・種類の交流合作プラットフォームを設立した。これらは現在の全世界の統治機構の代表性、有効性、即時性に適応するのが困難な現状を緩和し、公共商品の供給不足の局面を反転させ、国際社会が参加する国際統治システムの士気と自信を高め、同時に発展中の国家、特に新興国に対する国際社会の現実的な要求を満足させ、新興国と発展中の国家の発言権を高め、国際社会の統治システムが直面している公正で合理的な方向への発展に重要な影響を与える。
一帯一路は新しい時代の世界が共栄するための中国の案である。異なる性質、異なる発展段階の国家において、その具体的な訴求戦略と優先順位は同一でなく、一方で各国は発展と繁栄を望んでおり、各国共同の利益の最大公約数を探し出すことに有用である。どのように一国の発展計画を他国の戦略設計と対応させるか、相互補足がスムーズに行えることが各国が共栄共存するための重要な前提である。一帯一路は正に各国が探し求める発展機会のもと、同時に各自の発展の選択を尊重することを基礎として形成される合作のプラットフォームである。一帯一路は等しく利益を受けると言う立場に立って、相互に尊重する国際関係の基本に準じ、各国の発展の実際の需要に焦点を合わせ、各国発展戦略への対応に力を尽くす。また一帯一路は世界の許可と称賛を徐々に勝ち取りつつあり、また日増しに早期の利益を勝ち取りつつあり、関係国家への実際の利益をもたらし、世界が普遍的で均衡的で持続可能な繁栄に向けて走るための自信をもたらす。2016年10月に開通したアフリカ第一号となる電気鉄道−Yaji Railway (addis ababa, ethiopia to dijibouti) 、2017年5月に開通した Mone Railway (Mombasa to Nairobi)は、二つの中国のアフリカ大陸における代表的で影響力のある世紀の受注建設として、多くのアフリカ諸国より友好的な合作として、繁栄発展の方法として高い評価を得た。一帯一路は中国とアフリカの合作の縮図として、さらには希望の道、共存の道として見ることができる。

Yaji Railway (addis ababa, ethiopia to dijibouti)
addis ababa, ethiopia から dijibouti への列車

一帯一路は世界の均衡と持続可能な発展への新しい動力を増やし提供する新たなプラットフォームである。一帯一路は発展中の国を含む、南南合作と南北合作を実現し、全世界の持続可能な発展をサポートする。一帯一路はインフラ投資を着眼点として、自由を経済促進の要素とし、中国と関係諸国のマクロ政策を協調して推進する。一帯一路に参加している国家曰く、一帯一路は中国経済発展の「快速列車」「便利な列車」に乗り込み、自身の工業化を実現する、近代化のための歴史的な機会であり、南南合作の広範展開を力強く推進し、同時に南北対話を増進させ、南北合作の発展を促進する。これだけでなく、一帯一路の定義と理念は、「国連の2030年持続可能な発展アジェンダ」と適合し、連携を強化することが可能で、相互に実現を促進できる。国連秘書長の Guterres 氏は、一帯一路と「2030年持続可能な発展アジェンダ」は共に持続可能な発展目標で、共に機会の提供を試み、世界公共のプロジェクトであり、また相互利益の合作、共に国家と地域のコミュニケーションを深める。また Guterres 氏は関係する国家は十分に連絡を取り潜在的な利益を生み出すために、一帯一路と「国連の2030年持続可能な発展アジェンダ」の連携を強めることが重要であると強調した。

結びの言葉

そして、一帯一路建設は国連の2030年持続可能な発展アジェンダの実現をスムーズにする。
The Silk Roads, a new history of the world の著者である英歴史学者 Peter Frankopan はシルクロード は過去に世界を描き、さらには今の世界を描き、そして未来の世界を描くと言う。平和・繁栄・開放・創新・文明の道として、一帯一路は必ず遠くまで利をもたらすであろう。

まとめ

それでは最後に特に認識に差異があると感じた点をまとめたいと思います。

  • 一帯一路は非排他性
  • 一帯一路は実用的な合作のためのプラットフォーム
  • 各国は平等な参加者であり、貢献者であり、受益者
  • 一帯一路の主体は、国ではなく、企業である
  • 一帯一路は現存の開発プロジェクトと相互補完関係にあり、代替とはならない
  • 一帯一路の核心的な内容はインフラ建設の促進
  • 一帯一路は人と文化の交流を促進する
  • 一帯一路の基礎は民意
  • 中国が提案する新しい世界の統治制度は、共存共栄
  • 一帯一路は新しい時代の世界が共存共栄するための中国の提案

いかがだったでしょうか?もし読者の方がご存知の一帯一路とは違うと言うことであれば、まさにこの重要文章を和訳した意味があったと言うことで、大変嬉しく思います。
日本国内の経済成長には伸びしろが大きくないと考えられている中、多くの企業が既に行っているように、海外に商機を求めることは自然な流れと考えております。その中でも文化的・言語的背景の近い中国、また一帯一路参加国や企業との合作に関しては、今後まだまだ大きな可能性を秘めているように感じております。
弊社では中国経済・金融分野の調査を行っております。また調査情報をもとにコンサルティング業務も行っております。ご興味ご関心をお持ち頂いた方は、お問い合わせフォームよりご連絡頂ければ幸いです。
それでは本日はここまで、引き続きご愛読頂ければ幸いです。

若竹コンサルティング:戸田

<参考文献>
中国共产党新闻网:正确认识 “一带一路”
http://theory.people.com.cn/n1/2018/0226/c40531-29834263.html