こんにちは、戸田です。

人民元の上昇が対ドル、対円ともになかなか止まりません。そこで本日は足元の人民元高について解説してみようと思います。

なお筆者は中国現地のインターバンク(金融機関)取引の資格保有者ですので、人民元について詳しい方だと自負しております。

※更新手続きをしていませんので、資格(中国人民銀行傘下のCFETSから付与された売買資格)は失効しているかも知れませんが・・・

 

人民元の為替レートを確認する

まず現在の対ドル為替レートを確認してみましょう。添付したのは2021年初来のUSD/CNH(ドル人民元)チャートです。

USDCNH_Daily_20211019

2021年10月19日現在の為替レート:1USD = 6.4088CNH

※赤い水平ラインはサポートとレジスタンスレベルを示唆しています。

米中対立が強まった3月~4月に掛けてドル高、人民元安圧力が強まり一時6.60付近まで人民元安が進みました。しかしその後は反転し、じりじりと人民元高基調に転じています。現在は5月末に一瞬タッチした6.35を窺う状況です。本日、6.4250をクリアに下抜けましたので、まずは6.40を試す展開を想定しています。

続いて対円の為替レートをみていきましょう。

CNHJPY_Daily_20211019

2021年10月19日現在の為替レート:1CNH = 17.81JPY

USD/JPY(ドル円)上昇の影響が大きいですが、昨年に引き続き、今年もほとんど大きな下落を経験することなく上昇を続けています。つい先月までは16.80円レベルでもたついていたのですが、いまは1円上の17.80円まで上昇したことで、押し目を待っていた個人投資家や、日本の輸入企業にとっては辛い展開と言えます。

 

なぜ人民元高が進んでいるのか?

不思議に感じると思います。巨大IT企業の取り潰しや、恒大集団の債務不履行問題、全国的な電力不足、そして米中対立など、中国ネガティブな話題には事欠かない割に、為替は人民元高に進んでいるのですから、無理もありません。

一点目は「メディアの情報が過度に不安を煽っている可能性」を指摘したいと思います。日本のメディアは私たちの反中感情を利用し、中国ネガティブな報道を行う傾向がありますので、まずこの点は差し引いて見なければならないでしょう。

二点目は「貿易が伸びている」点です。話題に上っているIT企業、不動産業界などはミクロの話です。一方で貿易はマクロの話であり、直接的に外貨獲得(人民元高)に繋がる話ですので、こちらの要因を抑えておくべきでしょう。中国は2021年9月の貿易量、貿易黒字額が共に過去3年間で最大の数値を記録しています。

中国の貿易統計

 

三点目は相対的に高い金利水準です。引き続き米ドルと人民元の短期金利(3ヵ月)の間には2.4%前後の金利差が存在していることが以下のグラフから見てとることが出来ます。

米中金利差20211019

 

ちなみに10年債ではなくて短期金利で比較しているのは、短期金利の方が直接的に為替レートに対する影響が大きいからです。なぜならばスワップポイントに直接効くのは、短期金利だからです。

 

なおその他にも人民元の先高観を醸成する理由は事欠かないのですが、その点は以下の記事にサロンメンバーのちょびっぴさんがまとめてくれていますので、こちらをご参考ください。

中国人民元トレードに挑戦!1から学ぶ人民元の魅力と特徴(3)人民元はなぜ強い?その理由に迫る

 

今後の人民元の見通しについて

引き続き人民元高に見ています。対ドルは6.30台、対円は18.00円台が視野に入ってきたと思います。

恒大集団の債務弁済など少し気掛かりな状況は変わらないですが、他に積極的に買える通貨もないと思うので、相対的に人民元は買われやすいと考えます。中国の経済指標をきちんと追うと、たしかに勢いに欠けるところもあるのですが、それでも他の国と比べると買われやすい環境が整っていると思います。

ここまで一方向に上昇してきたので、今さら買いでついていけないと言う方も多いと思います。ですが順張りはおそらく人民元買いですので、順張り思考の方は買いから入るのが良いと思います。

下がれば売ってしまえばよい訳ですし、そこはFXの手軽さでもありますよね。

以上ご参考にして頂ければ幸いです。

 

<参考資料>

各種チャート+中国3ヵ月金利:Investing.com

米国3ヵ月金利:iborate.com

中国の貿易統計:中華人民共和国海关总署