シンガポールの金融政策について纏めましたのでご報告いたします。シンガポールは東南アジアの金融ハブであり、個人の資産形成や法人のASEANビジネスにおける重要拠点となりますので、お時間ある時に一読頂けると幸いです。
シンガポールの金融政策を司るMAS
シンガポールの金融政策を司る機関はMAS (Monetary Authority of Singapore)という中央銀行です。日本で言えば日本銀行、米国で言えばFRBに相当します。
MASはその独特の金融政策で知られており、金融政策の中心が為替レートの安定と言う珍しい制度を採用しています。他国は金利の調整を軸に金融政策を調整しているのですが、MASは為替レートを調整することで、物価上昇率をコントロールします。それからMASは1990年代のアジア通貨危機を上手く乗り切ったことで知られています。これはシンガポール経済や財務状況が他ASEAN地域に比べて健全だったことに加え、貿易割合を考慮した厳格な為替レート管理を行なっていたからと言われています。
次にシンガポールの現在の金融政策について少し詳しく見ていきます。
シンガポールの現在の金融政策
- シンガポールドルは各国の貿易割合や為替レートを考慮した独自の為替管理制度を採用している
- 為替相場は予め定めたバンドの中で変動し、その水準や方向は半年毎にアナウンスされる
- 為替レート管理方針は経済のファンダメンタルズを加味して半年毎に見直される
- MASは国内の金利水準とマネーサプライの調整を諦めている
(MASホームページより引用)シンガポールの経済を支えている輸出入業務には為替リスクがつきもの。ただしそれを可能な限り取り除くために貿易国のレート変動を加味したシンガポールドルの動きを意図的に形成しています。また為替相場の目標水準や方向性を半年毎にさし示すことで民間企業が変動に備えやすいようにしています。国の経済構造に沿った、洗練された制度であると言えると思います。
香港とシンガポールの金融政策の類似点
ところで香港とシンガポールの金融政策は類似点が多いですが、為替の変動に関してはシンガポールの方が変動を許容しています。香港の方がガッシリと相場を固定(1USD=7.8500HKD)していますね。シンガポールは引き続きある程度の相場変動を許容するのであれば、ASEAN地域において決済にSGDが多く使われるような政策を取っていくことで経済力をつけられるかもしれません。
どう言うことかというと、米国を例にするとわかりやすいのですが、世界中の企業や個人が米ドルを保有しています。なぜかという世界中で使えて、通貨の価値がそう簡単に崩れなそうだからです。では皆が皆現金で米ドルを持っているかと言うとそうではなくて、米株・米債に投資をしています。そうすると米国の株式市場はお金が非常に集まりやすいし、米国は債券を発行してお金をたくさん調達出来るということになります。つまり米ドルは米国の経済価値向上に大変大きく寄与しているということです。
シンガポールの金融政策の課題
私的にはシンガポールがASEAN地域においてSGD決済を積極的に推進していくと面白いと思います。近年のシンガポールの経済成長はペースダウン(2015 2.2%, 2016 2.4%, 2017 3.6%)していますので、ASEANの高い経済成長を享受し、ここからさらに経済成長出来るかどうかが一つの国の大きな課題となっております。
本日はここまでとなります。ASEAN地域の通貨制度は独特です。ぜひ投資や企業経営にお役立て頂ければ幸いです。
<参考文献・WebPage>
Monetary Authority of Singapore:https://www.mas.gov.sg/