2019年8月2日、米トランプ大統領が米中貿易協議の対中関税第4弾について twitter 上で発言しました。このツイートを受けて先週末の金融市場は大きく変動、全般的に、株安・債券高、為替は人民元安が進行しました。
そこで本日は『米中貿易協議の現状整理』『トランプ大統領の twitter 上の発言』を振り返りつつ、『今後の米中貿易協議』について弊社の分析を記載いたします。米中貿易協議の現状整理としてご活用下さいませ。
それでは早速ですが『米中貿易協議の現状整理』を箇条書きで行っていきます。
米中貿易協議の現状整理
2018年、米国の対中輸入額:5,500億ドル
2018年、中国の対米輸入額:1,300億ドル
→上記差額の4,200億ドルが米国の対中貿易赤字となり、これが極めて不公平であると言うのが、米国側の主張、『米中貿易協議の論点』となります。
関税第1弾:双方340億ドルに25%の関税
関税第2弾:双方160億ドルに25%の関税
→第2弾までは互いに報復関税を掛け合いましたが、双方の輸入額(母数)が異なるため、中国側が先に弾切れ、第3弾以降は米国が中国に重圧を掛ける展開となります。
米国の関税第3弾:対中輸入2000億ドルに25%の関税適用(2019年05月10日から適用)
中国の関税第3弾:対米輸入600億ドルに25%の関税(2019年06月01日から適用)
米国の第4弾:3000億ドル(残り全額)に2019年9月1日から関税適用予定
→先週末の金融市場は、上述の米国の対中関税第4弾を主因として大きく変動しました。
それでは続いてトランプ大統領が一昨日に実際にどのような発言を行ったのか振り返っていきます。
米中貿易協議に対するトランプ大統領の twitter 上の発言
注目を集めたトランプ大統領のツイート
訳:(中国と)協議中であるが、残りの(関税が掛かっていない)3,000億ドルの中国からの輸入品に対して、2019年9月1日から、10%の関税を課す。これは既に25%の関税を課している2,500億ドルの輸入品とは別である。
補記:これで中国からの輸入品の全額に対して関税が掛かることとなります。具体的には2500億ドルの輸入品へ25%、新たに(2019年9月1日から)3,000億ドルの輸入品へ10%です。
関税を掛けた理由に関するツイート
訳:たった今、米国の代表団が中国(上海)から建設的な将来の貿易に関する協議を終えて帰ってきた。残念なことに、米国は3ヶ月前に中国との協議は妥結すると思っていたけれども、中国は交渉妥結(契約サイン)の前に再交渉を行うことを決めた。一回は協議を妥結することに同意していたのにだ・・・
補記:米国が悪いのではなく、中国が約束を破ったと言うことを強調しています(真偽は当然不明)。そして追加関税を掛ける理由を3ヶ月前の約束反故としています。追加関税措置に3ヶ月の時差があることは不自然で、どうも本音は別のところにありそうです。
詳細に関するツイート
訳:たくさんの農業品を米国から購入すると言う話が進展しない。さらに私の友人の習近平氏は米国にFentanyl(医療用鎮痛剤で麻薬分類される)を販売するのを止めたいと言っていたのに、これも未だ止まっていない。そしてたくさんの米国人は Fentanyl によって亡くなっている。貿易協議は続いている・・・
補記:たくさんの農業品の基準が曖昧ですので、たくさんかどうかの判断が今後もできません。ですから実際に中国はたくさんの農業品を米国から輸入しているのですが、それが米国にとってたくさんかどうか、よく分からないと、こう言うことになります。そして Fentanyl に関して、中国側の不確定な将来的な話を、現在の話として引用しています。これは先ほどのツイートと同様に、時間軸がズレているので、強引な論法と言えます。ですので筆者は、米国が中国に難癖をつけているものと考えております。
締めくくりのツイート
訳:私たちは中国との複雑な貿易協議を前向きに進めていくことを期待しているし、米中関係の未来はとても明るいものだと感じている。
補記:米国から仕掛けた貿易協議で関係を悪化させておきながら、米中関係の未来はとても明るいと言う一文で締めくくる、とても米国人らしいツイートであると感じます。
それでは最後に今後の米中関係に関する見通しについて考えていきます。
今後の米中貿易協議
まず貿易協議に関して言えば、終結に近づいていると言う見方が出来ます。なぜならば第四弾が実質最後で、以後は関税対象品がないからです。ですので2018年初から始まった貿易協議(摩擦)そのものは後半戦に差し掛かっていると言って過言ではないと考えています。
ただし本日振り返りましたトランプ大統領の Twitter の投稿からも、中国に対して重圧を掛ける姿勢は鮮明であると考えています。ですから米中の覇権争いは他国を巻き込みながら今後も続いていくものと考えています。
この主張の根拠として加えたいのが、覇権争いと言うものは既存強国が新興勢力に迫られる時に歴史的にほぼ例外なく起こると言うことです。例えば14世紀後半のポルトガルとスペイン、15世紀のスペインとオランダ、近年で言えば第二次世界大戦や米ソ冷戦、例外なく既存強国と新興勢力の争いです。この視点については Charles W. Kegley, Jr. 氏が 『World Politics』 と言う著書にて深く分析しておりますので、もしご興味ございましたらご覧頂ければと思います。
それでは本日はここまで。米中貿易協議に関する分析如何だったでしょうか?もしこのブログが役に立ったと思う方は、引き続き当サイトをフォローして頂ければ幸いです。弊社の専門領域である金融市場は米中貿易協議の影響を非常に大きく受けますので、今後も機会があれば情報のアップデートを行っていきたいと考えております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
以下、情報ソース・参考文献・および留意事項
米商務省 https://www.commerce.gov/
ホワイトハウス https://www.whitehouse.gov/
トランプ大統領ツイッター https://twitter.com/realDonaldTrump
Charles W. Kegley, Jr : World Politics
※米中貿易摩擦概要の数字は、簡易版として調整しております