本日は現在進行中で激化している米中貿易協議についてアップデートします。米国や日本のソースが多い中で、弊社では中国商務省からの情報に重きを置いて調査に務めました。
目次
米中貿易協議の現状整理
米中貿易協議の代表者
米国側:ロバート・ライトハイザー氏。法律・政治畑。ロナルド・レーガン政権時に、日米貿易協議を担当、日本の提案書を紙飛行機に折って投げ返したと言う逸話がある。真偽のほどは不明。
中国側:劉鶴氏。習近平主席と中学校の同窓。2011年から2013年まで中国国務院発展研究センター副所長。2013年から中華人民共和国国家発展改革委員会副主任。2017年に中国共産党第19期中央政治局委員に選出。
米中貿易の総額(協議の論点)
2018年、米国の対中輸入額:5,500億ドル
2018年、中国の対米輸入額:1,260億ドル
→上記差額の4,240億ドルが米国の対中貿易赤字となり、これが極めて不公平であると言うのが、米国側の主張、『米中貿易協議の論点』。
関税適用の第一弾〜第四弾
関税第1弾:双方が340億ドルに25%の関税(2019年10月1日より30%の予定)
関税第2弾:双方が160億ドルに25%の関税(2019年10月1日より30%の予定)
→第2弾までは互いに報復関税を掛け合ったが、双方の輸入額(母数)が異なるため、中国側が先に弾切れ、第3弾以降は米国が中国に重圧を掛ける展開となった。
米国の対中関税第3弾:対中輸入2000億ドルに25%の関税(2019年10月1日より30%の予定)
中国の対米関税第3弾:対米輸入600億ドルに10%の関税
米国の対中関税第4弾:対中輸入3000億ドル(残り全額)に15%の関税適用(2019年9月1日から)
中国の対米関税第4弾:対米輸入160億ドルへも関税適用
※中国サイドは都度細かく見直しを実施しており、2019年8月23日の広告によれば、現在は660億ドルに対して25%、600億ドルに対して5%が適用となっている。
米中貿易協議に関するヘッドライン
2019/08/06:米財務省が中国を為替操作国に指定
2019/08/13:米中電話会議
2019/09/01:米国が対中関税第四弾を発動
2019/09/02:中国は米国をWTOへ提訴することを決定
2019/09/05:10月初旬に米中協議をワシントンで開催することを決定
米中貿易協議の注目材料と人民元への影響
米中貿易協議の注目材料
・WTOが中国からの提訴を受けて、現状をどのように判断するか
WTOはスイスはジュネーブに本拠を置く自由貿易を促進するための機関です。前身はGATTで、戦後の新しい貿易の仕組作りのために設立された機関と言えます。当然戦勝国の米国が大きく関与して設立されたのですが、現在は米国が自由貿易を促進しなくなり、代わりに中国が米国をWTOに提訴をすると言う違和感のある流れが継続しています。米国が中国を為替操作国に指定して、IMFが中国を擁護すると言う動きもみられましたが、第二次世界大戦後に作った米国の仕組みを米国自らが壊そうと言う動きに世の大きな流れを感じます。
・10月初旬の米中会談までの動き
物事に永遠ということはありえません。どこかに落とし所があり、それをマーケット(市場参加者)も探っています。本日中国側が公表しましたが、10月初旬に再度ロバート・ライトハイザー氏と劉鶴氏が会談をする予定のようです。2018年初から1年半以上が経過しましたが、年内決着を見据えて交渉が加速していくのか、大いに注目が集まります。
米中貿易協議が人民元相場に与える影響
基本的には人民元にとってネガティブな話ですから、交渉が過熱するたびに元安が進行しているのがここまでの流れです。よく新聞等で見かけるのが、中国は人民元安を誘導しているという論調ですが、これは誤解だと思っています。なぜなら毎朝発表される人民元の基準値が実勢相場水準よりも決まって元高方向に修正されて設定されているからです。ですからこれから人民元安が大きく走り出すかというと、その可能性は低いだろうと考えています。
先般マクロ分析やテクニカル分析をお伝えしていますが、これらも元安への行き過ぎを示唆しております。ですから輸入サイドのお客様はもちろんのこと、輸出サイドも大きな巻き戻しの動きに注意して年末に向けて社内の為替リスク管理規定を整えていく必要が高まっていると思います。投資家の方はこの辺りから人民元アセットを積み上げていけば、ただでさえ中国債券の利回りは高いですから、勝ちが見込みやすいと思います。
以下は直近のマクロ分析とテクニカル分析の記事ですので、ご参考まで貼り付けしておきます。
ドル人民元【元安はどこまで進むのか!?】
人民元/円【奈落の底に落ちてしまうのか!?】
それでは本日はここまで。弊社では今後も人民元を中心に、中国金融・経済情報を発信してまいりますので、引き続きフォローして頂ければ幸いです。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
戸田裕大
<情報ソース・参考文献>
米商務省
ホワイトハウス
ロバート・ライトハイザー氏ウィキペディア
中国財政部
中国商務省
劉鶴氏ウィキペディア
WTO
<ディスクレーマー>
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※米中貿易摩擦概要の数字はあくまで参考値としての認識をお願いいたします。貿易や関税に関する情報が分散しており、細かい数値まで担保することができません。