LPRの推移
LPRの過去推移

2019年8月17日、中国人民銀行が「貸出基準金利」の設定方法を変更することを決定しました。この変更を受けて、2019年8月20日より、LPR(Loan Prime Rate)と呼ばれる新たな貸出基準金利が新規融資に適用されることとなります。
従来、中国人民銀行が独自に定めた貸出基準金利(例えば期間一年以内は4.35%)を基に、銀行と顧客の融資契約が行われましたが、今後は月に一度LPRが公表され、LPRが変動金利融資契約の参照レートとなります。
そこで本日は中国人民銀行の公表原文を基に、「現在までの貸出基準金利制度」「今回新たに導入されたLPR制度」「今後の影響」について考察します。

現在までの貸出基準金利制度(旧LPR)

<現在の貸出基準金利>
貸出基準金利
最後に変更されたのが2015年10月24日で、4年弱変更がなかったため、しばしば議論の的になっていました。また従来の貸出基準金利(期間一年以内4.35%)は市場実勢(2019年8月16日、1YSHIBOR:3.08%)と比べて高く、企業への融資レートが十分に低下していない事(企業に十分に資金が行き渡らない可能性)が指摘されていました。
<SHIBORレート>
SHIBOR
今回いよいよ貸出基準金利を変更するわけですが、金利自由化への前向きな改革とも言えますし、米中貿易協議の影響を考慮して融資環境のさらなる整備に動いているとも言えます。変数は一つではないでしょう。

今回新たに導入されたLPR制度

LPR制度の概要は以下の通りです
基本的にSHIBOR(Shanghai Interbank Offered Rate)の算出方法に近い
・2019年8月20日より適用開始
・全国银行间同业拆借中心(SHIBORを公表している中国人民銀行の直属の事業単位)が管理・運営
・選定された18の銀行が「期間一年」と「期間五年以上」の二種類の Offered Rate(信用リスクをほとんど考慮しないベストレート)を全国银行间同业拆借中心へ提出
・期間一年以内、期間一年から期間五年は
・最低レート・最高レートを除く16の銀行レートを加重平均して平均値を算出
毎月20日(祝日順延)の9時30分にLPRを交付
銀行はLPRを貸出の基準レートとして適用

LPR導入による今後の影響について

実質貸出金利は大きく低下するでしょう。例えば期間一年の融資契約が全国平均で0.50%以上引き下がったとしても驚きはないです。一方で為替レートへの影響は軽微だと思います。なぜならば、もともと投資家は市場金利(1年のインターバンク金利)を3.0%前後で認識しており、今回は対顧客金利が変わるだけですので、為替相場(市場)への影響は軽微です。

本日はここまで。中国金融政策の大きな変更でしたので、速報性を重視して配信しました。詳細は2019年8月20日以降に確認出来ると思いますので、追ってご案内出来ればと思います。
弊社では今後も人民元を中心に、中国金融・経済情報を発信してまいりますので、引き続きフォローして頂ければ幸いです。

戸田裕大

<参考文献・WebPage>
SHIBORデータ:http://www.shibor.org/shibor/web/html/index.html
中国人民银行公告〔2019〕第15号:http://www.pbc.gov.cn/goutongjiaoliu/113456/113469/3876490/index.html
金融机构人民币贷款基准利率:http://www.pbc.gov.cn/zhengcehuobisi/125207/125213/125440/125838/125888/2968985/index.html
中国人民银行有关负责人就完善贷款市场报价利率形成机制答记者问:http://www.pbc.gov.cn/goutongjiaoliu/113456/113469/3876493/index.html
過去の貸出基準金利の推移:http://www.pbc.gov.cn/zhengcehuobisi/125207/125213/125440/125838/125888/2968985/index.html