過去記事「なぜFXで負けるのか?3つの視点から解説します!」では、為替相場予測が当たれば、勝率が大きく改善するということをお伝えしました。また、そのためには、必要な情報を取得すべきと言うお話をしました。

なぜFXで負けるのか?3つの視点から解説します!

そこで今回は、FX取引に必要な情報とは何か?と言う視点で、「実需」と「投機」にわけて解説します。「実需」と「投機」それぞれにキープレイヤーが存在し、それぞれ特徴も異なります。早速みていきましょう。

実需

実需とは、実際の需要に基づいて意思決定を行うプレイヤーで、その取引を「実需取引」と呼びます。

次に実需のプレイヤーを「企業」と「個人」に分けて、それぞれについて詳しく見ていきましょう。

 

企業

まずは企業からです。ここでは企業を「輸出企業」「輸入企業」「その他の企業」に分類します。

 

輸出企業

輸出企業は海外にモノを販売する企業のことです。代表例としては、例えば自動車産業のトヨタ自動車、精密部品の日本電産が挙げられます。世界中に日本の商品を輸出してその利益のドルを日本円に両替します。したがって、ドル売り円買いを行うのが特徴です。

モノを作るには工場などの大型施設が必要となることも多いため、全般に輸出企業は大企業が多いです。特に日本の場合は自動車メーカーやそのサプライチェーンが大きいため、その影響もあると思います。

 

輸入企業

輸入企業は輸出企業と反対に、日本円を米ドルに変えて海外からモノを仕入れています。日本で代表的な輸入品と言えば燃料や食品です。例えば、東京電力や関西電力といった電力会社は電力開発のための燃料を海外から仕入れてきて、それを原材料として発電し、発電した電力を全国に送電しています。

日本円をドルに両替して支払いするので、円売りドル買いのフローが発生します。

 

その他の企業

その他の企業としては、弁護士事務所や広告・メディア関係の企業が挙げられます。例えば、TBSやフジテレビなどでは海外からのニュースを引っ張ってくるために、各地に支局を置いていますが、大きなモノを輸出したり輸入したりということはなく、人件費のやり取りがメインになりますので、相場に与える影響はそう大きくありません。

ですから抑えておくべき取引は輸出と輸入です。

基本的にはモノやサービスの輸出入が企業活動の中心になるのですが、他にも企業が時期をみておこなっている「資本取引」「貸借取引」がありますので、こちらもみていきましょう。

 

資本取引

企業は貿易やサービス取引の他に、資本取引もおこなっています。例えば、M&Aと言う言葉を聞いたことがあると思います。いわゆる企業買収ですが、これがまさに資本取引にあたります。

この記事を作成している段階では、東芝が買収されるかもしれないという噂が出ていましたが、日本の企業が買収される可能性があるということで、海外からドルを売って日本円に両替するフローが想定されます。

東芝のように大きな企業であれば、買収しようとすると何千億円、何兆円という規模になります。だからこそ、取引の規模も大きくなりますし、その分、インパクトも大きくなります。アンテナを高く立てておくべき項目と言えます

 

貸借取引

貸借取引に関してはあまり馴染みがないかもしれませんが、企業においては親会社が子会社にお金を貸す「親子ローン」や、反対に子会社や親会社にお金を貸す「子親ローン」といった取引が国を跨いでおこなわれています。これが貸借取引に伴う為替取引です。

ただ、総額はそこまで大きくはないですし、その分、影響も少ないですので、ここでは貸借取引もあると言う理解で問題ありません。

 

個人

意外に思われるかもしれませんが、企業と同じように個人も輸入や輸出といった貿易取引、サービス取引、資本取引や貸借取引といった実需取引をおこなっています。個人というとそれだけで規模が小さいと思われがちなのですが、実は積み重なるとものすごく規模の大きなものになります。

個人の実需取引としてイメージして頂きたい項目は、支出としての「爆買い」と収入としての「出稼ぎ」です。

 

爆買い

国全体で見た時に、中国は世界の工場としてモノを輸出し、大きく黒字を計上しているのですが、実は中国人はそれに匹敵するほどの金額を日本を含めた海外で消費しています。爆買いというのは、視点を変えるととても大きな為替取引なのです。

 

出稼ぎ

フィリピン人が海外で英語の教師として働いたり、医療従事者として働いているという話を耳にした方もいるのではないかと思います。フィリピンは国の政策として英語教育に力を入れており、英語の話せるフィリピン人は高い給与を求めてさまざまな国に出稼ぎへ行くわけですが、その出稼ぎのお金は基本的に親元に仕送りで戻していくことになります。その金額が実はとても大きいのです。

 

実需は国際収支統計でわかる

実需のプレイヤーについて企業と個人に分けて詳しく見てきましたが、企業と個人を抱えている大元は国になります。そして、国のすべての取引をまとめたものが「国際収支統計」と呼ばれています。

この国際収支統計をチェックすることによって、各国における全体の実需の構図がわかります。世の中には実需と投機という2種類の取引しかないわけですが、そのうちのひとつである実需は国際収支統計をチェックすることで把握できるのです。

 

実需における3つの特徴

実需は、相場変動をリスクと考えています。1ドル100円であれば100ドルの商品を1万円で購入できますが、1ドル110円になってしまうと100ドルの商品を1万1千円で購入しなければなりません。実質的に10%値上がりしてしまうため、採算が合わなくなることもあります。それでは困るということで、実需は相場変動をリスクと捉えて、その為替リスクに対してヘッジを行うか否かを決定しています。

また実需の取引には3つの特徴があります。

 

実需に基づく取引しかしない

実需勢は、先に述べた通り、基本的には実際の需要に基づく取引しかしません。例えば海外の自動車ディーラーに車を販売して、その販売代金をドルで回収したのでそれを日本円に変えるという塩梅です。ですからドルが上がりそうだなと仮に思ったとしても、ドルを買う取引はしないのです。

 

日付や曜日に基づく取引が多い

「月次の売上の締め日が20日」「毎月15日に振込をする」といった企業も多いのではないでしょうか?企業の取引は実際に日付と曜日に左右されるケースがとても多いです。取引の発生する日がわかりやすく、不変的です。

 

行き過ぎた相場では資本取引が発生しやすい

2016年にソフトバンクグループがイギリスのアーム社を買収したことを覚えていますか?2020年に結局売却してしまったのですが、買収時はブレグジットで英ポンドが20%ほど下がったタイミングだったと記憶しています。

20%英ポンドの価値が下落するということは、つまり買収価格も20%下落するわけです。もともと買収チームは「この金額だったら買いたい」というラインを持っているはずですが、為替相場が大きく動くことによってそのラインに一気に近づく可能性があります。

東芝の買収の話もやはり円安になってから出てきました。もちろん、偶然の可能性もありますが、行き過ぎた相場では資本取引が発生しやすい点は覚えておいたほうがよいでしょう。

 

投機

次は、投機について解説します。投機は実需と反対に、利鞘を求めておこなう取引のことです。投機取引をおこなっている機関として「金融機関」「ファンド」「個人投資家」などが挙げられます。

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

 

金融機関

さまざま金融機関がありますが、銀行系では、三菱東京ufj銀行などの「メガバンク」、京都信用金庫などの「信用金庫」、三井住友信託銀行などの「信託銀行」が挙げられます。その中でも特に大きいプレイヤーが「メガバンク」です。なぜならば、実需の外国為替取引では法人の方や個人の経営者の方の多くがメガバンクを使用しているからです。

一般的にFXで億単位のトレーディングを「億トレ」などと称するのですが、そのイメージでいくとメガバンクは「兆トレ」。メガバンクの為替取引はとにかく金額が大きいので、その動きにはやはり目を向けておいたほうがよいでしょう。

 

ファンド

ファンドとは投資家から資金を集めた法人格を指す言葉です。ヘッジファンド、ファミリーオフィス、公的機関にわけて解説していきます。

ヘッジファンド

ヘッジファンドとは法人格を有して、投機で利益を上げることを目的に設立された機関です。有名なヘッジファンドとしては、例えばレイ・ダリオ氏が創業した「ブリッジウォーター」というアメリカのファンドがあげられます。インフレ、為替レート、GDPなどの経済動向に基づいたグローバルマクロ戦略をスタイルとしており、また極めて厳格な社内評価システムを取り入れていることでも有名です。

ファミリーオフィス

ファミリーオフィスとは、家族の資産運用などをおこなう法人格です。2021年は「アルケゴス」と言うファミリーオフィスが、巨額損失問題で一躍注目を集めました。世の中には想像を超えるお金持ちが存在して、香港など富裕層の多い地域に巨額の資金運用を行うファミリーオフィスが見られます。

公的機関

公的機関は、年金基金や国立大学の運用チームなどを指します。例としては日本だとGPIFが挙げられます。GPIFは「年金積立金管理運用独立行政法人」のことで、その名の通り年金の運用をおこなっています。総資産180超円の超巨大プレイヤーです。

日本にGPIFが存在するように各国にも、GPIFに相当するようなファンドがありますので、当然、そういった公的機関も大きなプレイヤーと言えます。

 

個人投資家

個人投資家に関しては分類が難しいのですが、印象的なものをいくつかピックアップしていきたいと思います。

例えば、日本のFXトレーダーのことを海外では「ミセスワタナベ」と呼びます。ミセスワタナベの取引金額の大きさに世界中が注目した時期もありました。日本のFX市場は海外のFX市場と比べても非常に規模が大きいのです。

また、最近ではアメリカで、1株単位未満でも株取引ができるロビンフッドというアプリが流行っているのですが、これを利用して取引する個人投資家を「ロビンフッター」と呼ぶそうです。

それから、少し前に仮想通貨界隈で「億り人」という言葉が有名になりました。仮想通貨の値上がりとともに資産が億を突破した方を指す言葉のようです。

これらはすべて個人投資家の呼称と言えます。

 

投機筋の思惑

「金融機関」「ファンド」「個人投資家」これらは投機筋と呼ばれるのですが、投機筋は相場変動をチャンスと捉えており、相場変動に対して、実需とは真逆の受け取り方をしています。投機筋にとって相場変動はチャンスで、対象の相場が動くからこそ収益機会に繋がるわけです。

投機筋である「金融機関」「ファンド」「個人投資家」の特徴や代表例について説明しましたが、次にそれぞれのプレイヤーの運用の思惑についても解説していきます。

 

金融機関は低リスク運用が基本

金融機関は、低リスク運用が基本スタイルになります。というのも、金融機関の本業はお客様のビジネスサポートですので、お客様が必要な資金を必要なときに引き出せるようにしておかないといけないので、無理は出来ないわけです。ですから高リスクな取引をしてしまってお金がなくなってしまったのでは、本末転倒です。そうならないためにも、必然的に低リスクの運用をおこなっていくことになります。

おそらくほとんどの金融機関はファンダメンタル分析重視で運用をおこなっているはずです。基本的には資産を5%でも10%でも増やしたらそれでよしとし、ある程度、中長期的な視点で投資をおこなっています。

 

ファンドはその運用方針による

ファンドに関しては、基本的にその運用方針によります。例えば、取引スパンひとつとってもバラバラです。中には高頻度取引と呼ばれ、一秒間に何回も何回も取引するようなファンドもあります。その一方で、長期取引のファンドもあります。

また投資対象の地域もさまざまです。世界分散投資をしているファンドもあれば、アジアに特化した投資をしているファンドもあります。

これから主流になる可能性を秘めているのは、AIを使った投資ファンドと思います。成功の可否は、どうでしょう、ちょっとまだ想像がつきませんが、お金は集まりそうな気がしますよね(笑)。

 

個人投資家は運用目標による

個人投資家の投資行動は、その運用目標によって、異なります。例えば、今手元に100万円があるとしましょう。その100万円を1年間で110万円にしたいのか、それとも1億円にしたいのかによって、リスクもリターンも成功可能性もすべて変わってきます。

100万円を110万円にするという目標であれば、そこそこ低リスクで実現できる可能性があります。例えばS&P500指数と呼ばれる米株のインデックス投資は、配当込みの平均リターンが年率10%前後と言われています。ですからS&P500のインデックスファンドを保有するリスクで、10%程度のリターンを確保できる可能性も十分にあります。もちろん毎年のパフォーマンスは上下に大きくブレますし、確実と言う訳ではありませんが、過去の実績はそうだったと言うことです。

一方で、100万円を1億円にする目標であれば、かなりの頻度で売ったり買ったりしなければいけませんし、それもかなりの高精度で当て続けないといけません。必然的に、リスクは高く、実現できる可能性も低くなります。

そもそも「+10%」で嬉しいと思うか「+10%」では少ないと思うかによって、運用のやり方は変わってくるものです。3億円の10%は3千万ですけれども、100万円の10%は10万円ですから、受け止め方もひとによってさまざまだと思います。

 

実需と投機における大切な4つのポイント

実需と投機、それぞれについて詳しくみてきましたが、最後に実需と投機における大切なポイントを4つにまとめて解説します。

 

実需は淡々と、投機は機を見て取引する

実需は相場変動をリスクと捉えるのに対して、投機は相場変動をチャンスと捉えています。ゆえに実需は日付や曜日によって淡々と取引をしますが、投機は機を見て臨機応変に取引をおこないます。

 

実需は永続的に、投機は刹那的に相場に影響を与える

実需は永続的に相場に影響を与えるのに対して、投機は刹那的に相場に影響を与えます。例えば、原材料を輸入しようと思って海外にドルを支払うとします。しかし、そのドルは、二度と戻ってくることはありません。実需の取引は一方通行なのです。

一方で、投機の取引においてはドルを買ったらどこかでドルを売ることになります。そのため、短期的に相場に影響を与え、大きなうねりを生み出しますが、その影響は刹那的です。ドル買い1、ドル売り1で影響はゼロになります。

つまり、中長期的に相場に影響を与えていくのは実需になるわけです。これは重要なポイントなのでぜひ覚えておいてください。

 

実需のチェックは初心者におすすめ

実需のチェックは初心者の方におすすめです。何曜日にドルが買われやすいのか、何日にドルが買われやすいのかをチェックするのは簡単な作業ですし、曜日と日付をチェックしてその日にドルが上がるのか下がるのか見るだけですので始めやすい分析手法と言えます。

厳密に言うと午前や午後で区切るとなお良いのですが、最初から細かいところまでチェックするのはなかなか大変かと思いますので、まずは四半期末に注目するのがいいでしょう。3ヶ月に1回、ドル買いが多いのか、それともドル売りが多いのかチェックするところから始めるとよいと思います。

東京時間であれば8時から10時に掛けて動きをチェックしてみると、おそらく何かしらの傾向が出ているでしょう。

 

実需の概要は国際収支統計で確認できる

これはやや上級者向けになってしまうのですが、実需の概要は国際収支統計で確認できます。株の投資家であれば企業の決算書を読むと思うのですが、為替のトレーダーは企業の決算書ではなく、国際収支統計を読みます

初心者の方は実需は国際収支統計で確認できることをひとまず頭に入れておけばよいです。

 

さて、最後までお付き合いを頂きまして、ありがとうございました。戸田裕大とそのチームスタッフでは「為替から世界を学ぶ」をコンセプトにFXや投資に役立つ情報を発信しています。本日の記事が役に立ったと思う方は記事をシェアをして頂ければ幸いです。

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それでは、引き続き一緒に為替から世界を学んでいきましょう!